そよの話
「今淹れるね!」
アスカは手際よくお湯をポットに入れて茶葉を蒸らしてカップに紅茶を注ぐ。
そよはその様子を興味深そうに眺めていた。
紅茶を淹れ終わると、アスカはドライフルーツも一緒に机に出した。
「ドライフルーツもあって、一緒に食べると美味しいよ! これが桃、これがりんご、これがブドウだよ!」
アスカはそれぞれ指さしながら教える。
「桃……、リンゴに、ぶどう。ん~」
そよは迷う仕草をして、
「りんごにする!」
リンゴをかじった。そして少し渋い顔をした。
「苦手だったかな?」
「食感が苦手。味は美味しい」
ドライフルーツの独特の食感が苦手らしい。
「じゃあ紅茶に入れて、リンゴの風味を紅茶に移して飲んでみて」
アスカがそう促すと、そよはリンゴを紅茶に浸した。
そしてその紅茶を飲んだ。
「うん! 美味しい!」
笑顔を見せた。
「そよちゃんは他の神様と会うのは初めて?」
そうアスカが尋ねるとそよは不安そうな顔をした。ふうこをぎゅっと抱きしめた。
「そうだと思うけど……なんで?」
「ちょっと気になってね。なんか見た目がみんな違うから」
見た目も年齢も、性格も違いそうな神々の団体客、家族でもないならどういう集まりなのか気になるのも当然だろう。
そして彼らはお互いに何も知らない様子である。
「会うのは初めてだよ! みんなで人の世界を見て回るんだって! 楽しみなんだ~!」
そよは嬉しそうに二人と話をした。
見た目通りに子供らしく、見た目以上に幼く元気いっぱいの神という印象を慧は受けた。
そしてそよから聞ける話もアマテラスとツクヨミから聞いたものと変わらなかった。
新しい手がかりはなさそうだと慧は内心肩を落とした。
二人は早々に部屋を後にした。
「また遊んでね!」
去り際そよは子供らしく言った。そうは言っていたが、少し名残惜しそうにふうこをぎゅっと抱きしめていたのに、慧の胸はギュンと絞めつけられた。
凄く彼女は幼く感じられた。
神様というのは何百年も生きているだろうが、どのくらいの期間で成長していくの
か慧は興味を持った。
「もちろん! またね!」
アスカは手を振って扉を閉めた。
「神様でも少女なんですね」
「だね! 続けて行ってみよう!」
続いて隣の部屋をノックする。
この部屋は誰の部屋なのだろうか。
「こんにちは!」
すぐに中から応答があった。
「はーい!」
若い女性の声。元気の良い返事がした。
そして鍵もかけてなかったようで、すぐにガチャリと扉が開いた。
中から女性が顔だけ覗き込むようにして姿を現した。
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