紅茶とドライフルーツ



 ケイコはあるものをテーブルの上に出した。



 三枚の皿に、それぞれ別の何かが入れられている。



「ドライフルーツと一緒に飲んでみて」



 ブドウ、モモ、リンゴのドライフルーツ、三種類の果実を使って作ったものだった。



「これ作ったんですか?」



「そう、これもカゲロウさんに教わりながら作ってみたの。砂糖とか使ってないから体には良いと思うよ」



「これもいただきます」



 慧は桃のドライフルーツを手に取った。



 しっかりと水が抜けている。



 小さくしぼんだ桃の果実、水分が抜けた分色が鮮やかだ。



「桃のいい香りがする。桃が一番果物で好きなんですよ」



 慧はドライフルーツを食べる。



 桃のドライフルーツは生の桃とは異なり、歯ごたえがあった。



「甘くてうまい。この甘みは紅茶に合いますね」



 ケイコは嬉しそうに頷く。



「私はブドウにしよう!」



 アスカはブドウを手に取った。



「大粒!」



「ブドウは大粒のものを使ってみたの」



 アスカはブドウを口にする。



「小さいレーズンとは全然違う! ブドウの持っている渋みがプラスになっていて、味の深みがすごい!」



 ケイコはアスカの言葉にも嬉しそうに反応する。



「紅茶に入れてみると、紅茶の味がより甘くなって美味しいよ」



 二人はリンゴのドライフルーツを入れてみた。



「リンゴの香りが合わさって香りが良くなった!」



「リンゴの酸味が加わって味に深みが出ましたね」




「ドライフルーツは紅茶に入れたら美味しいかと思って作ってみたんだけど、バーで出したらお酒もこれで飲めるんじゃないかって女将さんが言ってね」



「うん、イイと思う! 私まだ未成年だからお酒とあうか分からないけど」





 ここで急にアスカはパンと手を叩いた。



「ケイコちゃん、コレ使えるかも!」



「?」

 ケイコはキョトンと首をかしげる。




「これをお客さんに飲んでもらうの。『今度旅館で紅茶を出す予定なんだけど、今日味見してもらえますか』って。そうすれば部屋を訪れる口実になるじゃない⁉」



「なるほど」



 少々強引な気もするが、これ以上の理由は今の時点で、ない。



 期間が限られているのだ、あまりモタモタといてもいられない。多少の強引な動機付けは必要だ。



 大切なことは訪れる本人たちが堂々とできるかなのだ。



「ケイコちゃんありがとう、天才だよ!」



 アスカはケイコの手を取って手の甲を撫でた。



「まぁ! お役に立てて良かった」

 ケイコは嬉しそうに笑った。



「ケイコちゃん、また紅茶淹れてもらえる?」



「もちろん」



 ケイコは頷いた。



「慧君、準備できたら行こうか?」



「はい」

 慧は強く頷いた。



 アスカはニヤリと笑った。

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