太陽の女神の話 その2



 どうやら現状アマテラス自身から得られる情報はとり終えたようだ。



 アスカは本件とは関係ない話をし始めた。



「アマテラスさんはもう一人弟がいらっしゃいますよね」



 アスカがそう言うと彼女は頷いた。



「スサノオという弟がいます」



「彼はここにはいないんですか?」



「はい。彼とは会っていないんです。そもそも今彼とは住んでいる世界が違うので」



「聞いた話では、喧嘩をしたとか?」



「えぇ、まぁ…お恥ずかしい話ですが」



 アマテラスは話しづらそうにもじもじとする。



「仲が悪くなってしまったんですか?」




「そう、伝わっていますよね。喧嘩をしたのは事実ですが、お互い憎しみ合ってるとかではないんですよ。少し長引いた兄弟げんかです。会ってはいませんが、世界のどこにいようが、今でもスサノオのことは大切に想っております。いちいち規格外の男ですが、家族ですものね」




(どこにいても大切な家族、か)



 それから二人はアマテラスの話を聞いた。



「そろそろ行こうか」



「そうですね、あんまり邪魔しちゃ悪いし」



 扉の前にて、

「弟の話も聞いてやってください。あまり話好きな性格ではありませんが、人嫌いではないので」

 弟を気に掛けるアマテラス。




「はい、その予定です」



「では、どこまでできるかわかりませんがやれるだけやってみます!」



 アスカはガッツポーズをする。



「こんなことまで頼んでしまって申し訳ありませんが、よろしくお願いしますね」

 アマテラスは丁寧にお辞儀した。



「ゆっくりお過ごしくださいね」



「えぇ、特に温泉が楽しみです!」





 二人は部屋を出た。



「随分長く居座っちゃったね」



「お茶おかわりしちゃいましたもんね」



「想像以上に優しかったね!」



「親しみのある人柄でしたね。正しいかはわからないけど、世話好きのおば…お姉さんみたいな感じでしたね」



 アスカは笑いながら頷いた。

「伝説もいろいろ変わって伝わってるんだね。どうも私が大学で勉強した日本神話とは少し様子が違う気がしたな」



「そういえばアスカさんは大学でこういうことも勉強しているんですか」



「うん、日本文化勉強しているからね、その流れで日本神話の授業も取ってるんだ」



 今回の調査にアスカの知識はとても頼もしいものになりそうだ。



「しかし困ったね、アマテラスさんかからは犯人探しに必要なものは得られなかったね」



「そうですね」



「お次は隣のツクヨミさんのお部屋に行ってみよう!」



「ちょっと待ってください!」



 慧はアスカの手首をつかむ。



「ツクヨミさんは手紙のこと知らないんですよね? どうやって話を訊こうって言うんですか⁉」



 アマテラスは事情を知っていることもあり、話してくれたが、ここからは容疑者候補と話をすることになる。



 何も知らない彼ら、いきなり旅館の者が部屋を訪れたら警戒するだろう。



 もし犯人が変なことをしだしたとしたら、どんなことをされるか想像もつかない。



 相手は神にもなりすます者なのだから。



 話を聞く必要は絶対にあるが、慎重にならなければならない。



「何か手を考えないと行けないか」



 アスカは腕を組んだ。

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