彼らの正体
その色白の彼の後ろには五人の男女が横一列に並んでいる。
慧は彼らのことも一人一人見ていく。
最初に見たのは若い赤髪の女性。細身で長身、スタイルの良さと少し派手目な見た目からギャルっぽさを感じる。
(キャピキャピ系か⁉)
彼女は苦手かもしれないと咄嗟に慧は思った。
次は長い髪を結んだ男性、見た目は初老くらい。ひげを生やしている。
(背も高いな。落ち着いた紳士といったところか。でも……)
彼から出る雰囲気はどこか近寄りがたいオーラみたいなものを慧は感じた。
その次は小柄な少女。小さな人形を大切そうに抱いているところが愛らしい。
(あの子も人形みたいなかわいさだな)
お次は眼鏡をかけた若い青年。細身で小顔、ギャル系の彼女と並んでいるとモデルのようだ。
(短髪の爽やか系。頭の形も良い)
慧は最後の一人を見る。
服の上から出る体の線がセクシーな女性。長く伸びた黒い巻き髪が印象的である。唇の形が良く大きめなところがチャーミングだ。
(なんか色っぽいな)
五人はそれぞれの方向を向いて、旅館の中を観察している。
初めて来たのだろう、それが彼らの反応を見てわかった。
およそ相交わることもなさそうな見た目の彼ら、どういう団体なのだろうか。
とにかく、彼らの共通点としては着物を着ていること、どことなく品が醸し出ていること、だろうか。
(いやいや、見た目で判断してはいけない…)
慧は首をぶんぶんと横に振る。
「どうかした?」
隣のアスカが小声で声をかけてくる。
「いや何でもないです」
アスカにも彼らをどう思うか訊いてみたかったが、相手が目の前にいるので話すことはできなかった。
慧が後ろでそんなことを考えている間に女将は仕事を進めていく。
「いらっしゃいませ。お待ちしていましたよ」
女将がいつも通り丁寧にお辞儀をして客人を迎え入れる。
「お世話になります」
先頭の女性も女将と同じくらい丁寧にお辞儀をした。
「確認のためにお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」
そう言われると女性は穏やかに微笑んで、
「はい。アマテラスと申します」
「!」
ピクリと慧の体が動いた。
アマテラスとは日本の神の中の一番偉い神かなんかではなかっただろうか。
(本物? まさかね)
しかしこの品のある女性は、まさに神々しい。
名前が冗談だとしても、本気と捉えてしまいそうな魅力がある。
女将は驚く様子も何もなく、仕事を進めていく。
「こちらへご案内いたします」
女将が彼女らを部屋へ案内していった。
ぽつんと残された慧とアスカ。
慧は口を開く。
「あの、アマテラスって、あの神様じゃないですよね?」
「そうだよ、あの日本の神様だよ」
アスカは何も気にする様子もなく答えた。
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