デートの話を聞かせて!
ケイコも休憩部屋に入ってきた。
彼女の後ろからター坊も入ってくる。
両手に何か持っているので、足二本でヨチヨチ歩いてくる。
それはそれは大事そうに持ってくる。
「ター坊かき氷食べるの? いいね!」
ター坊はアスカの隣に座って、器用にスプーンでかき氷を食べ始めた。
シャクシャクと氷が音を立てる。
「美味しそうだね。私もあとで食べよーっと」
アスカはター坊の背中を撫でる。
「せっかくケイコちゃんも来たから二人の話教えてよ。ケイコちゃんは前の日から慧君の部屋に行ったんだよね?」
ケイコがこくりと控えめに頷く。
「でも慧君、前の日は一日部屋にいなかったんだよね」
「え? ケイコちゃんを置いてどこに行ってたの?」
「気が付かなかったんですよ、ケイコさんいるの。‥‥それに人と会ってたんです」
アスカの眉毛がピクリと上がる。
「ほう…、噂の彼女かい?」
「そうです…」
アスカは腕を組む。
「別の女の子二人と二日連続でデートに出かけるなんて、なかなかやりますネェ~」
アスカがニヤニヤと笑う。
「デートじゃないですって、たまたまですよ」
「ひどーい! ケイコちゃんの前で! ケイコちゃん泣いちゃうよ~?」
アスカはケイコの背中を優しく撫でた。
「えー!」
二人のやり取りをケイコは面白そうに見て微笑んでいる。
(慧君、随分この旅館に慣れたね)
「まぁそんな会話は置いておいて、いろいろケイコちゃんを連れて行ったんでしょ? どこに行ったの?」
「ケイコさんから聞いたんじゃ?」
「私は慧君からも聞きたいなぁ」
うっとりとした目で見つめるアスカ。
「ええと、出発してからドライブスルーで飲み物を買ったんです」
「コーヒーフロート美味しかったな」
「二人とも同じの?」
「いや、俺はカフェラテを。ずっと気になってたお店で行きたかったんですよ」
「それで海に行ってって感じでしたね」
「海は混んでなかった?」
「遊泳禁止のビーチに行ったんですよ」
「そうだったんだ。カップルが多いなぁと思ったよ」
ケイコが思い出したように言う。
「あ、見ていたんですね」
ケイコは自然にばかり目を向けていて、人は見ていなかったのではと思っていたが、やはり彼女も気になっていたのだ。
「カップル多かったんだ?」
「結構、アツアツな雰囲気の人たちが多かったよね?」
思い出して恥ずかしくなったのか耳に髪をかけながらケイコは肩をすくめた。
「結構アツアツでした」
カップル達はほとんどが大学生で、慧と歳は大きく変わらないだろう。
同年代の者たちがあんなに互いに思いを形にできるというのかと
人目もはばからず二人の世界に入ることがいつかできるのだろうか。
慧には恋人がいた経験がないからそう思うのかもしれない。
(それも、『まだ経験をしたことがないんだ、いいだろ!』か)
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