映画を見ます…



 映画館は人が多く溢れていた。



「やっぱり混んでるな。でも大丈夫」



 二人は映画館の隅に行く。



「じゃあケイコさん、俺チケット買って来るんで。見たいジャンルとかあります?」



 ケイコは首を横に振った。



「分からないから、任せてもいい? ごめんね」



「わかりました」



 ケイコには隅に待っていてもらう。



(映画は何でもいいけど、席が多い所にしよう。あと恋愛もの以外)



 慧は恋愛ものが苦手だ。



 それに女性と二人で恋愛ものなんて、そんなことした日には命日だと思っている。



 洋画の一つを選んだ。



 字幕映画にした。



 席をタッチパネルで選択する。



 字幕映画だけあって随分すいているが、まだ予約がほとんど入っていないエリアを選んだ。



「大学生一人と……、大人一人か」



 二人分のチケットを隣り合わせでとった。



 チケットを発券し、一枚をケイコに渡す。



「私の分もとってくれたの?」



 幽霊には必要ないかもしれないが、全てが新鮮だというケイコの思い出になればいいと思った。



「チケット代はいいですから!」




 

「ポップコーンは食べたことあります?」




「うん、旅館で映画のイベントをしたときにみんなで食べた時が初めてだったかな。美味しかったな」



「じゃあ買ってきますね」



 慧は売店に向かう。



 その前に、

「飲み物何にします?」

 携帯でメニューを見せる。



「ウーロン茶をお願いしようかな。あ! これお金、今回はこれで払って!」


 ケイコは慧の手に千円札を数枚手渡した。



「はい、分かりました」



 慧は売店にて、注文をする。



「ポップコーンMサイズとウーロン茶Mサイズ二つお願いします」



「お待たせしました」



 商品を受け取ると、ケイコにおつりを手渡した。

「ごちそうさまです」



「ううん、私のほうがごちそうしてもらってばかりだから」



「さぁ、行きましょう」



 チケットを渡してちぎってもらう。



 ケイコも慧の後をついてくる。



(ウーロン茶を二つ持っているのは、俺がすごい水分補給するからです)



 店員はそんなことを見てはいないだろうが、恥ずかしさからそんな言い訳を考えた。



 二人は席に座った。



「まずは宣伝が流れるんだね」



「俺、映画館で見るときはこの宣伝を見るのも好きなんです」



 映画が始まった。



 しかし慧は迫力ある大画面よりも隣に意識を集中してしまう。



(隣に知ってる人がいるのって、落ち着いて見られないな。それに…)



 ケイコから甘くさわやかな香りがする。



 幽霊でも香りは持っているのだろうか。



 慧はちらりとケイコの方を見る。



 ケイコは画面をじっと見つめている。



 ギャグのシーンではクスリと笑ったり、アクションシーンではびくりと肩を震わせたり、反応を見せた。



 そしてポップコーンを食べている。



 楽しんでいる様子に慧は安心する。



 あっという間の二時間。



「どうでした?」




「映画の内容はわからないところもあったけど、雰囲気とかはすごく面白くて楽しかったよ! 暗い劇場で映画を見るのってすごく新鮮。音響も良くて迫力があったね」




 わからない部分があったのは慧がシリーズ物の映画を選んだためだろう。



(俺も初めて見たからよくわからなかったけど)



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