慧の幼馴染



 バイトの休みの日のこと。



「慧、レナちゃん来てるよ」



「はーい」



 玄関に現れた女性。



 小柄、ボブの若い女性。



「ヤッホー」



 そう挨拶してくる彼女、慧の幼馴染の女性「佐々木 レナ」。



 小さい時から家が近所同士でよく会っていた。



 幼稚園から高校まで二人は同じところに通った。



 慧にとっては数少ない気の置けない人である。



 今はこの町を離れて、都心の大学へ通っている。



 今日は以前から約束していた出かける日である。




「おう、やっほー」



「変わってないなぁ」



「数か月ぶりじゃあねぇ」



 笑うレナの様子も変わっていない。



 お互いの私服を見るのが久しぶりなくらいである。



「ドライブ行こう! 私免許取ったんだ」



 レナはバンバンと車を叩く。



 少し派手な色の車である。



 多分、少し高い車である。



「高いでしょこの車」



「値段はわかんない、家族のだから」



「さすがお金持ち」



 レナはサングラスをかける。



 その姿が割と様になっていて、かっこいいな、と慧は思った。



 しかし、

「その服は良いの? 丈が短すぎてお腹が見えてますけど」



 服の丈は短く、レナのお腹を隠すことなくあらわにしている。



 レナの腹部、縦に薄い腹筋の線が見えている。



「いいの! これはそういうデザインなの!」



「お腹冷えますよ、お嬢さん」



 レナはむすっと頬を膨らませた。

「かっこいいでしょ? おしゃれなの! 慧ちゃんのために準備してきたんだよ。この洋服」




「ありがとうございます…」



 普通でいいのに、と思うがそんな彼女の心遣いも嬉しく思う。



「しかし、これはいいのかい?」



「いいでしょ、まだ免許取ってから一年経ってないもん!」



 かっこいい車体の見た目と裏腹に、車にはしっかりと初心者マークが付けられている。



 レナらしさが表れている。




「さぁ、乗った乗った!」



 レナは慧を助手席に押し込んだ。



 レナはエンジンをかけ車を発進させる。



「どこ行くのか決まってる?」



 レナがニコリと笑った。



「ちょっと行きたい所と行ってみたいお店があるのよねぇ」

 





「……ここって、俺の家の墓があるとこじゃん」



 着いたところは先日慧が訪れた霊園だった。



「そう、お墓参りしていこうと思って」



「この間お盆の時に来たよ」



「何年振り? どういう風の吹き回しで来たの?」



 レナが目を丸くして驚く。



「何となくだよ」



「私は毎年来てるのに、息子の慧ちゃんが来てないってどういうことよ」



「毎年来てるんだ」



 その告白に慧は驚く。



 他人の墓に毎年来るとは珍しい。




「お花とお線香買ってこよ!」



 レナと慧は墓をきれいに掃除した。



 枯れた花を取り換えて、線香をあげる。




「まだこの時間か。お昼には早いけど、車走らせたらいい時間になるかな!」



 レナはまた車を走らせる。




「山のほうへ参りまーす!」

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