餃子焼き大会、スタート!
夕方、旅館の庭に餃子焼き大会の会場が設置されていく。
暗くなっても辺りが見えるように、ライトを庭の木々に設置。
大きいテーブルとイスをいくつも組み立てていく。
巨大な鉄板が数枚。
炭に火をつけていく。
「炭火焼きか」
パチパチと小さく音を立てる。
煙も上がる。
「うわぁ! 目に沁みるネェ!」
アスカは団扇をパタパタと火に向かって扇ぎながら楽しそうに話す。
「テンション上がってきた!」
白いTシャツから細く引き締まった腕がのぞく。
今日は頭にヘアバンドを巻いている。
汗止めだろう。
今夜は熱くなりそうだ。
夕食の支度が整う頃には薄暗くなり始めていた。
「みなさーん、始めますよー!」
女将の掛け声に旅館からゾロゾロと客たちが出てくる。
いつもの庭がライトなどで装飾されていることに皆が驚く。
「おぉ! これはまたすごい!」
「わぁ! 餃子がいっぱい!」
餃子が巨大な鉄板に並べられていく。
カゲロウが餃子の面倒を見る。
じっと火加減と鉄板の上の餃子を見ている。
大きな目は獲物を待ち伏せる動物の目をしていた。
本気。
「料理人の目って感じ」
「料理人だからね。美味しいものを作るっていうことに命を懸けてる人だし」
「初めて見ましたよ」
いつもこのように料理を作っているのかと思うと、相当な集中力だ。
「火加減命だからね。気を抜くと一気にこげちゃうから」
皆がカゲロウを見ても、いつものように恥ずかしそうにする素振りさえ見せない。
火とカゲロウ、世界にお互いしかいないように向かい合う両者。
じっとその時を待っている。
「根っからの職人なんだよね。料理に対して全力で向き合ってるから」
「!」
カゲロウがカッと目を見開いた。
鉄板の餃子を急いで大きな皿に移していく。
完成だ。
焼き加減は絶妙、綺麗な焼き目がついている。
「はーい! 皆さんできましたよ!」
客たちがテーブルに運ばれた餃子を次々に口に運んでいく。
「旨いわぁ!」
「ビールが進んじゃうね! すみませーん! ビールおかわりくださーい!」
ドリンク係はコロちゃんズとケイコ。
せっせと客たちのドリンクを運ぶ。
「ごはんとお味噌汁もありますからね!」
餃子をおかずにご飯をかきこむ客たち。
「あー! 最高だ」
「カゲロウさん、お庭でとれた野菜も焼いていいかい?」
女将と津軽が籠にいっぱいの野菜を持ってくる。
ナス、ピーマン、ししとう、トウモロコシなど色とりどりの夏の収穫物。
カゲロウはウンウンと頷いた。
「野菜もたくさん食べてもらわないとね」
津軽は網を火の上にのせて、野菜を焼き始めた。
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