夕食時


 夕食の時間になった。


 食堂に宿泊客たちが入ってくる。


 すでに温泉に入った者たちは少々顔を赤くしながら食堂に来た。


 皆すっきりとした顔である。


 夕食時の仕事は主に飲み物の注文を受けること。今日はアスカがいないので、人間は慧一人。そしてコロちゃんズの何人かでこなしていく。



「すいませーん! 生ビール二つとウーロン茶二つ!」


「はい!」


「オレンジジュースと緑茶くださーい!」



 次々と注文を受けていく。


 コロちゃんズも注文を受け、残りの何人かが飲み物の準備をする。


 流れるようなチームワークで進んでいく。




 朝食時とは異なり、夕食時の食堂はとても賑やかである。


 そしていくらか明るい。


「うわぁ! 美味しい!」


 皆がカゲロウの作った料理に舌鼓を打つ。


 厨房の中にいるカゲロウには聞こえているのだろうか。


 カゲロウはどんな顔をしているのだろうか。




(茹でダコみたいになってたりして)


 慧は小さく笑う。


 コロちゃんズが不思議そうに慧を眺めた。




「・・・囲まないでくださいよ・・・」



 夕食が落ち着いてくると、食堂は次第に落ち着きを取り戻していく。


 夕食を終えた子供たちは各々食堂を出ていく。


「レクレーション室で映画やるんだって、見に行こー!」

 ドタドタと出ていく中、


「一緒に行こう!」

 女の子がコロちゃんズの一人を抱えて行ってしまった。



 やはりかわいい見た目の彼らは子供たちにも人気である。


 マスコットやぬいぐるみのような感じだろうか。


 残されたコロちゃんズ達は「バイバイ」と連れていかれた仲間に手を振った。


 連れていかれる方も「バイバイ」と手を振る。



「いいの?」


 慧はコロちゃんズに声をかける。


 彼らは頷き、グッと丸い拳を上げた。


 親指を上げたサインだろうか、「大丈夫!」ということらしい。


 食堂には大人たちが残った。


 一人で日本酒を飲む者、夫婦で静かに乾杯をする者たち、様々が時間を過ごしている。



 慧は食堂の食器を片付けてケイコの方へ向かう。


「ケイコさん帰ってきました」


「さ、そろそろ開けようか」



 ケイコは姿を消す。


 そして、すぐに姿を現した。


 夜になったので彼女の姿は昼よりはっきりとしている。


 ケイコはバーに立つ用に服を変えていた。


 白シャツに黒パンツ、タイトな装いである。


 華奢な彼女によく似合っている。


 だからこそ余計に女性らしい体のラインが強調されている。



 慧の前で髪を結び始めた。


 高めに髪を結びポニーテールにしている。



(うなじ、なんか女性っぽいな。いや、女性ではあるんだけども)



 そして、どこか無防備な気がしないでもない。

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