23.エピローグ2 作品を通じて伝えたいメッセージ

 最も過酷なサバイバル―――それは人生である―――


 たとえいじめを受けたとしても―――たとえどれだけ苦難が多くても―――死なないで―――


 ここから消えてしまえば楽になれる―――そんな悲しいこと言わないで―――


 自分を愛して命を大切にしてほしい。それが私の願いであり、作品を通じて伝えたいことです。


 人生はときに残酷―――神様は人間に試練を与える。


 マザーテレサは聖書にある一節からこう言った―――神様は乗り越えられない試練は与えない、と―――


 人生の紆余曲折で嘆きたくなるときもあるだろう。そのときの苦悩と流した涙が、人生の肥やしへと転化するには、長い年月を要する場合もある。


 試練を乗り越えれば、きっと幸せになれるから、トラウマや悲しみに負けないで―――


 大きな試練を乗り越えたあとには、心の中に虹が架かる。魂が成長したのち、運命の歯車が廻り始めるはずだ。長い暗闇のトンネルを抜けたあとには、目の前に光の世界が広がっている。私はそう信じている。


 とはいえ、私たち人間はいまこの瞬間を生きている。苦しみが長ければ長いほど、苦悩が永遠に続くのではないかと不安に駆られる。


 受験、失恋、友達との喧嘩。頭を悩ませる日々。


 生きている以上、悩みは尽きない。なぜって人間だから。


 とくに学生を悩ませるいじめは、とても深刻な社会問題のひとつ。

 

 いじめを受ければ学校に行けなくなる。登校拒否する学生の気持ちはとてもつらいだろう。学生にとって学校は社会そのものだ。その社会からはずされてしまったら……居場所を失ってしまったら……どこに行けばいい……。類たちにとっても大切な場所だった。青春と思い出が詰まった場所、それが学校なのだ。


 目の前が暗闇に染まってしまったら、あすも同じだと絶望してしまう。未来に希望が持てなくなる。いまが幸せに満ち足りていて、未来にも希望があるとわかっていたら、類たち十三人のように最悪な状況下にあっても必死に生きようとするはずだ。


 死にたいやつは死ねばいいと心ないことを言うひとがいる。それはまちがっている。夢と希望に満ちた人生を送っていれば誰だって死にたくない。死にたくて死ぬひとなんかいやしないのだ。死ななければならない状況に追い込まれ、やむを得ず死を選択する。それはとてもつらくて悲しいこと。自殺に至るまでの苦悩は本人にしかわからない。


 理沙もすべてを失い、絶望した。そのあと、してはならない選択をしてしまう。だが、類の魂が風となり理沙の命を救った。


 もしこのとき、理沙が本当に死んでいたら……。


 あの世に逝った理沙の魂が、神様だけが持つ未来が見える鏡を覗かせてもらったら……そこには双子の赤ちゃんに母乳を与える幸せな自分が映っているはずだ。


 それを見た瞬間、自殺した自分をどれだけ責めるだろう、どれだけ後悔するだろう。だが一度死んでしまったら、もう二度と生き返れないんだ。


 お腹に宿る新たな命は、未来に続く希望の象徴だ。それは、死にゆく類が残した希望の光。その大切な希望の光を自らの手で断ち切ってしまう、それが自殺なんだ。


 人間に未来を見ることはできない。あす何が起きるかなんてわからない。いまはつらくても十年後、二十年後、すごく幸せな自分がいるかもしれない。


 中学時代がつらくても、明彦のように高校でたくさんの友達に囲まれているかもしれない。苦しみを乗り越えたあとには、かけがえのない幸せが待っているはずなのだ。


 だから自殺しないで……魂になってから後悔しても遅いんだ。


 類は腐敗した自分の体を揺さぶり、必死に蘇ろうとした。だが、すべての機能を失った肉体に戻ろうとしても戻れない。肉体と魂が完全に分離してしまえば、もう終わりなんだ。


 私たちは未来を信じて生きるしかないんだよ。現状がどれだけつらくても負けないで。未来の光は君だけのもの。君だけの宝だ。


 諦めないで―――生きて―――人生を謳歌して―――


 怒りや悲しみ―――どうして自分だけがこんな目に遭わなければならないのかと憤りを感じても、復讐心を抱いてはならない。なぜなら人間は、幸せになるために産まれてきているから。


 そしてどんな理由であれ、ひとを殺めてはならない。小夜子は継母の息子を愛するあまり、殺してしまった。そして鏡の世界という牢屋に幽閉されてしまった。リアルな世界で復讐や殺人を犯してしまえば、誰も幸せにならない。不幸しか生まれないのだ。


 もし君が、苛立ちを感じたときや、落ち込んだときには、SNSで出会った似たような境遇のユーザー同士で支え合い、つらい現状や悩みを打ち明け合ったりしてもいいんだ。どこかで誰かに打ち明けないと、心が折れてしまうから、インターネットを良い方向に活用すれば、心が救われることもあるだろう。厚生労働省のホームページにも紹介されている相談窓口もある。そこでは、必ずあなたの話を親身に聞いてくれる。


 生きてさえいれば、きっといつか良いことがある。神様は、頑張っている私たちに奇跡を与えてくれるはずだ。だからどれだけ先が見えなくても、希望を捨てないで。


 傷ついた腕の私も、いまこの瞬間を生きている―――


 つらいときは無理をしないで立ち止まってもいいんだ。ゆっくりと自分のペースでかまわない。


 生きて―――生きて―――生き抜いて―――


 命をまっとうするその日まで―――ともにこの世界で―――


         《完》


 

あなたの人生に幸あれ。


最後までおつき合い頂きありがとうございました。


感謝と愛をこめて―――紅月逢花

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永遠の十七歳 ――高校生まま時が止まった俺が、一世紀を生き抜いた君を抱きしめるとき―― 愛花 @mitutukiayumu777

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