第2話 カップラーメン問題

「んーー、やっと授業終わったあ~」

俺が背を伸ばしてそう呟くとすぐさま晴のつっこみがとんでくる。

「いや、あんたはほとんど寝てたでしょ。」

「厳しいな~、まっ!今日は部活もないし帰ろうぜ。」

「そうね!ついでにコンビニでプリンでも買お!」

「そーだな……俺も在庫が切れてきたし、カップラーメン買おうかな。」

「カップラーメンねぇ……あんたはもうちょい料理しなさいよ。」

「料理って言っても俺にとっちゃカップラーメンも立派な料理だけどな。」

そう言うと晴はいかにもうんざりした顔をした。

「はあーー、お湯をいれて待つだけのが料理?料理ってのは、もっと炒めたり、調味料をいれたり、手間がかかるものよ。」

「そうか?じゃあ、カップラーメンが料理じゃないなら何だって言うんだよ。」

「うーん。そうね……お菓子みたいなもんよ。お、か、し。」

「それは違うだろ」

「やっぱ違うかあ。」

俺たちはそんな会話をしながら荷物を持ち、教室を出た。

「とりあえず、今日の話のテーマはカップラーメンが料理か否か、に決定だな。」

「言っとくけど私は意見を変える気ないから~」

「俺もさ。そもそも料理ってのは、ご飯を作って用意することだろ?」

「そうね。だから、お湯を入れるだけのカップラーメンは料理じゃないと思うわ。」

「お湯を入れるのも立派な料理の行程だと思うけどな。料理番組でも、お湯を入れる行程があったとしてもカットしないだろ?」

「それはそうだけど……カップラーメンはお湯を入れるだけでしょ?さっきも言ったけど焼いたり、炒めたり、味付けしたりするから料理なの。」

「じゃあ、カップラーメンになんか味付け足したり、アレンジしたら料理ってこと?」

「まあ、そう思うけど。カップラーメンで作るチャーハンとか料理だと思うわ。けど、あんたそんなことしないでしょ?」

「しないよ。」

「じゃ、関係ないじゃん。」

「まあまあ。ともかく、カップラーメンだって料理さ。晴の意見をまとめると、要はがんばって作ったものが料理ってことだろ?」

「うん。工夫を加えたりしてね。」

「だったら、カップラーメンだってそうだろ?企業が一生懸命努力して、自宅でお湯を入れるだけで完成するラーメンを作ったんだから。」

「それは……でも、天ががんばってるわけじゃないでしょ。がんばってるのは企業さんたちで…」

「じゃあ、晴はお店で出されるものは料理じゃないって言うの?」

「えっ」

「だって、お店のご飯は晴が苦労して作ったものじゃないだろ?」

「あっ、えっと~………」

晴は言葉がつまり口をモゴモゴし始めた。

「そのお……それとこれは話が別でしょ!」

「はあ?」

「その、あれよ!お店のご飯は、やっぱ、その場でお店の人たちががんばって作って!その…料理にして、提供してるから!」

「カップラーメンは?」

「ええと……その、どっちかというとカップラーメンはすごい技術だから!天だってスマホを料理とは言わないでしょ!」

とりあえず、頭に浮かんだことを言ってるな…こいつ。

「ほら、あの…あっ!もう校門よ!いやー話してると早いね!よし!コンビニに行こう!」

そう言ってコンビニのほうを指差す。

「……敗けを認めたってこと?」

「ななななにが?言ったはずよ!意見は変えないって……カップラーメンは技術だから、料理じゃないの!」

「技術ねえ。料理研究家って言葉もあるし、美味しいご飯を作るのも1種の技術だと思うぜ。火の強さとか、火をつけるタイミング、食材の入れる順番…そういうのを研究してようやくできた料理ってのもあるだろ?それを料理の技術と言わずして何という?伝統料理とかだっていい例さ。職人の技術あってこそだ。……要するに、技術だからといって料理じゃない証明にはならないぜ。」

「ぐむむ……料理できないくせに…」

「ぐっ…痛いところついてきやがる…」

そんな会話をしているといつのまにかコンビニにたどり着いた。

「着いたな。まあ、今日の話は俺の勝……」

「よし!プリン買お!ほらほら、カップラーメン買うんでしょ!」

「………まあ、いいや。ついでに俺も甘いの買おうかな。」

「いいじゃん、いいじゃん!」

晴は笑顔でそう言ってコンビニへ入っていった。


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1たす1は? 有部 根号 @aruberoot1879

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