犯人は「桃子」

チャンキチ

第1話 事件発生

目の前には日本刀で切り刻まれた死体がアスファルトの上に無造作に放置されていた。


「こんなひどいこと、人間がすることじゃありません!」


助手の桃子が言う。

桃子はいつもこうだ。感情をむき出しにして、目の前の現実を全身で拒絶する。それが彼女の良いところでもあり、悪いところでもある。


「でも、桃子。これは紛れもなく、人間がやったことだ。」

私は冷静さを装いながらも、喉の奥に広がる嫌な味を振り払うように話した。死体はひどい有様だった。切断面が鋭く、まるで一瞬で仕事を終えたかのように整然としている。


「こんな切り口、見たことない。普通の人間にできる技じゃないわ。」桃子は手袋を嵌めて死体に近づき、無意識のうちに眉をひそめた。「刀を扱うプロか、そうでなければ……」


「そうでなければ?」

私は促す。


桃子は一瞬言葉を飲み込んだあと、小さく囁いた。「……怪物。」


その言葉に私は眉をひそめた。現実的でないと分かりつつも、この惨状が普通の人間の仕業だとは到底思えなかった。だが怪物など非現実的な存在がこんな東京の片隅に現れるとは信じがたい。


「まあ、そういう推測は後だ。」私はその場を仕切り直すように言った。「まずは現場の証拠を確保しよう。警察が来る前に必要な情報を集めておく。」

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犯人は「桃子」 チャンキチ @tatsu1012

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