湿気

@takeshi123456

第1話

 おもえば通院している病院の主治医も引退し、ろくに一般人のように働くこともなく、私は65歳になった。いちおう、ねんれい32の当時でいう晩婚時期に健常者の妻と結婚する事がができ、男二人と女一人の家庭は次々と結婚し独立し私の周りには誰もいなくなった。妻は去年亡くした。


人生はドラマや映画、小説とは違う。それを突き出される恐怖はこの歳になるまでわからないものだ。


病状である統合失調症は今日も休みなくフル回転していて、気がつけば薬との生活にも慣れしたしみ、妻を無くした事による侘しさも悲しさも、何も感じないでいた。


『感じない』というワードは正直つらい。若い頃は

いつも思っていた。好きな事をして好きな事に追求して一生楽しみながら生きていく、、絵空事だ。


死に近づくにつれて得るのは冒険心や探究心ではない。記憶は薄れ、今生きているという現実も薄れ、

残るのは若き日に培った、いつかは消えてなくなっていく物体だ。物体とは言葉は悪いが人間や動物の事だ。私も彼も彼女もただの物体、そう感じてしまうのは私の特性だけかもしれないが、時にそう思ってしまうのだから、仕方がない。他に例える子供ができるのであれば、私の小さい脳みそを穿り回せば

『空虚感』が正しいのかもしれない。


死に近づくにつれて感じる空虚…生半可なものではなく、若い頃のような好奇心などは、まったく、全然、消えてしまうものなのだ。


話しがそれた。この物語はくだらない私という人間の戯言を話すものではない。物語のキーは先週の日曜日に遡る。


週にに3回ほど開かれる、作業書の慣れしたしんだレク作業を同じ障害者と楽しんでいる事がの話しだ。私は『戦没者の墓』という、第二次世界対戦で

亡くなった人達の墓の展覧会のような場所に出席していた。


そこで私は目を話したすきに、たむろされていた自分の周りの仲間達がいなくなった事に気がつく。

別に一人でも問題はなく、子供のように仲間外れだとか話したくないこの人とは、なんていうわがままを言う人もいない。きっと老人ホームなんかよりも

ずっと有意義で安定した生活であると確信している。障害者とは、そういう人達だ。


だが戦没者の墓に掘られた、私の親世代の知らない人の名前を眺めるのも飽きがきていたので、しかなく仲間たちを探し、輪に戻ろうと考えた。


ゆっくりと腰を上げて私は歩いた。しばらくすると

仲間たちを見つけた。なぜか皆笑い合っているのが

みえて私は一番親しい友人のところへいき、「何を笑っているんだい?」と訪ねてみた。


「嘉穂碁 湿気」


「しっけ?」、、、、。













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