エピソード2
「ここがダンジョンかぁ? どっちかというと神殿みたいやけど?」
しばらく道なりにまっすぐ来てみたところ、山を削って建てたような人工物が目の前に現れた。世界遺産特集で見たような石像が2体、入り口を挟んでいた。入り口の上の方にも不思議なレリーフが施されてるように見える。何かまではわからんけど......。
「とにかく、中に入って見よか」
中はとても広く、天然の石タイルで床が覆われていてコツコツと音が反響する。
しばらく平坦でだだっ広い空間が続いて行った。ただ、唯一の救いは明かりがあることくらいやろうか......。
「広いなぁ!! あ、あそこに階段がある......。 ということは地下もこんくらい広いってことよなぁ......」
やっぱり、声も反響して聞こえてくる。
しばらく草木も生えていない固い地面を歩いていると、ぷにっとしたものを踏んだ気がした。俺は嫌な予感がして下を見やると、足元からにゅるりと大きめのアメーバのようなものが出てきた。これって、スライムってやつか?
「いかにも、雑魚キャラって感じの見た目やな。しかも、キモい方のスライムやん。お金にならなそうやし、無視しよ」
足元でスライムの体色を変化したように見えたけど、気にも留めずに進んだ。
すると、背後から影が襲い掛かってきた!
「な、なんなんや! こいつ!!」
スライムの体色はくすんが青色から、赤色に変化して襲って来た。しかも、なんか発射してきとる!!
「石が、溶けとる!! もしかして、酸か!? わからんけど、あれに当たったらあかんってことが分かった......」
さらに、スライムは興奮状態のまま再び酸を飛ばしてきた。
「死ぬわけにはいかへんねん!! その攻撃、返したる! ビュービューや!」
俺が腕を払うと、飛んできていた酸がスライムの方へ戻っていった。だが、力が強すぎてスライム事吹き飛んでしまった。 酸は床に落ちていったものの、スライムは近くにいた人影にべたりとくっついてしまった。
「しもた!!」
俺が人影に近づくと、そこには女性がいてスライムに雁字搦めになって身動きが取れなくなっていた。
「ベタベタする......」
「すまん! 今助ける!!」
女性からねばねばのスライムを剥がしとり、俺は遠くへ吹き飛ばしていった。
「これで終わりや! メラメラじゃあ!!」
腕をスライムの方へ伸ばすと、手のひらから炎が放射されていった。炎の勢いはスライムに行き届き、彼の持っていた酸と反応したのか爆発四散した。
「大丈夫か? 怪我無いか?」
俺は女性に手を差し伸べる。女性は立ち上がり、こくりと頷いた。
背が高くて顔が陰に隠れてよう見えへんけど、彼女の言う通りケガはなさそうやな......。
「じゃあ、俺行くわ。パーティとか組んで、分け前とか考えんの嫌やし......。ごめんな! ほな、さいなら~」
俺は、一息入れて女性を置いてさらに深くへ潜っていく。階段を降りている最中も、時折スライムがうろちょろしてくる。同じのんと戦うのも嫌やし、エンカウントを避けながら降りて行くと、また広間に出て来た。だが、さっきと雰囲気が違う。さっきより明るいし、悪魔をかたどったような銅像が広間の両端にずらりと並んでる。
「なんか薄気味悪いな......」
奥の方を見ると、俺なんかよりはるかに大きな扉が閉まっていた。
なんか、奥に宝でもありそうな雰囲気やん? そうなってくると、この銅像群もなんか、貴重なものを守るために建てられたみたいに見えて来たな......。
「行くしか、ないやろ......」
俺はその大きな扉へと足を進めた。だが、ずっと視線を感じる気がする。あの怪物の銅像からだ......。ゆっくりと銅像の方へ向くと、4体くらいの銅像が置かれていた台ごと動かしてこちらを見つめていた。
「ああ......。 気のせいってことにならんかな......」
そのままその銅像を見つめながらゆっくりと後ずさりすると、その銅像はズズズッと音を立てながらこちらへ近づいてきた。マジか......。あの銅像、動くんかいな!
あれか、ガーゴイルっちゅうやつか!? そう思うと、ガーゴイルは台から離れてその背中に携えてあった羽を伸ばして羽ばたき始めた。俺は即座に扉の方へ振り返った。ドアノブを押したり引いたりするも、扉はびくともしない。
「こいつら倒さなあかんてわけかっ!? でもあんな固そうな敵、どうやって倒せばいいんや?」
俺はまず、炎の魔法を使っていった。だが、銅の融点が高すぎるのかビクともしてない......。もっと、もっとや! もっと火力があればええんや!
「ドロドロ!」
そういうと、今度は自分の身体がスライムのようにドロドロになっていった。ちゃうねん! 俺がイメージしてたんはマグマとかそういうの! くそ、俺のイメージ通りにはいかんのか......。ガーゴイルの攻撃は当たらんくなったのはええとして、これじゃまともに戦われへん。一旦元の身体に戻ってやり直しか......。
「チャキッ! よし、元に戻った! なら、これでどうや! ジャバジャバ!」
俺は水をイメージして言うと、そのイメージの通りに魔法は水を生み出していった。ガーゴイルの熱された赤い体に見事命中して、ジューという音共に急激に冷やされていく。これを繰り返したらもろくなりそうやけど、めんどくさいな......。
「もっとキンキンに冷えてほしいんよな。氷みたいに」
ボソリと言うと、魔法が発動してしまった。せや、俺の意志とは勝手に擬音言ったら発動するんやったな。この世界......。いくら何でも難儀すぎやろ!!
と思っていた矢先、魔力のエネルギーが斬撃となって複数飛び散っていった。そのいくつかはガーゴイルに当たり、その身体に傷をつけていた。
「なるほど、斬撃は効果ありって感じか。なら、スパっと解決しそうやな!」
そう言うと、魔法の発動するぽわんという音が聞こえてきた。たちまち、1体のガーゴイルの身体が真っ二つになった。流石に真っ二つになったガーゴイルは、もう動いてこない。
「即死級の魔法か? このスパッとって」
またもぽわんという音が聞こえて来た。すると、またもガーゴイルの1体が真っ二つになる。俺は何度も何度もその言葉を発した。ガーゴイルはその度に真っ二つにされていった。怖いな......。半分生きてないようなモンスターやったからグロさ軽減されてるけど、他のやったら絶対血とか出てるで......。知らんけど。
「いつの間にか全部倒してもた......。きっしょ......」
俺は自分の手をまじまじと見た。その両手は自分の力に怯えて震えてるようだった。こんなん、チート級の魔法やな......。大事に使お。 少し自分の手汗をズボンで吹いていると、ギギギという音が聞こえ始めた。振り向くとあの大きな扉が開き始めていた。よかった。これで前に進める。それと同時に、ガーゴイルの死体が全部灰のようになって消えていった。少し見ていると、地面になにか光るものが落ちていた。
「これは......アイテムってやつか? これは、鍵か?」
じっくり見ると、シリンダーキーのような形になっていて扉の近くの柱にも同じようなものが入りそうな穴が掘られていた。これに差し込んだらええんか?
「えい!」
鍵が穴にハマった。試しに時計回りに回すと、ゴゴゴっという音と共に目の前の扉が開き始めた。おおお、ダンジョン感120%って感じやな。
「なんか入り組んでそうやなぁ......」
扉の先に見えたのは、複数の分かれ道。しかもどれも細い。
俺は迷子にならないか心配しつつも、俺は真ん中の道を選んで進んでいった。
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