13話


ピコンッ


 元の世界と異世界の中でも、未だ初めて狩をしてから料理した、うさぎの肉を食べている、その貴重な最中なのにも関わらず目の前にステータスボードが勝手に出てきて、ある報せが書かれていた。


ハルトは料理を微妙に遮る半透明のボードが邪魔と言うように、報告を見もしないで払い消した、でも食事が進んでいくごとにだんだんと食欲も収まっていき。

少しだけ弱くなった食欲の束縛に抗って、今度は料理には被らないように、横を向いて『ステータス』と言った。


 12才   《アメムラ ハルト》

『パワー、スピード、ガード、とありきたりなステータスの項目が並んでいて大体は2や1の数字だが一つだけ、テクニックは3になっていた。

多分スキルの使い方なんかも、入っているステータスなんだろうと、何となく理解はした。

 その下に目を向ければ、また細長い枠に自身の所持しているスキル達が、一番上の報せを筆頭にピックアップされ、一緒に計6個のスキルが並んでいた。


一つのスキルの練度が上がりました。


料理スキル 練度7→8

★スキル 練度MAX

乗馬スキル練度2

剣術スキル練度4

……


「ん、料理スキルの練度が上がっている、


これが想定の10の位なら、練度はもう80か、エアリスも言ってたスキル練度、100がMAXってのが自分にも適応されるなら、あと2回…旅はこれからだってのにえげつないな。」


肉の油のついたフォークとハンカチを置いて、今まで何度も説明を聞いても、これ事だけははぐらかされている様で、どうしても気になってしまう謎が再燃する。


「“なんで俺だけ?” エアリス、魔法でこうなったとか、噂程度でもいいから聞かないか?」

今も食欲は治りそうにも無く、口の中にまだ残っているのに追加で肉を口に運んで頬を膨らませているエアリスに、口を拭いたハルトは、今日一日の一度目のため息を吐いた。


「それはなんふぉも言ぇないてすね〜」


モグモグモグモグ、

カチャ、パクモグモグ…ゴクン

ハルトの質問に、エアリスも一旦食べ終わるかと思ったが、さらにもう一口食べてから話し始める。


「まあ、魔法で再現することはできると思います、

ステータスを変える魔法に関してはかなり難しくて、経験を積んだ天才と言われる魔法使いが数十人や大量の供物が必要だし、

それにそれでも、失敗する可能性の方が圧倒的に高いんです!普通やりませんよ。」

興奮気味で話すエアリスはいつのまにか椅子を立って、フォークを指示棒のように扱いながら、熱弁してくれた。


「常人なら……ね、

ハルトのステータスに関してはこれ以上は分から無いですね……おかわりください。」

普通なら常人ならその一言で、なぜか気を落としたのか椅子に座って、トボトボとまた食べ始めた。


「やっぱり詳しいんだなぁ、エアリスは。」

「ええ私も、一応その天才ですから。」

「じゃあ旅の中で便利な魔法とか教えられるんですか?」

その場を打開しようと適当に肘を突きながら口から出た、おだて言葉で急にイキイキとし出した。


「おお!教わりたいんですね、


良いでしょう良いでしょう

ではまず私を師匠って呼んで、そしてそのあとは毎日マッサージして、私は肩が凝りやすいので肩を重点的に、腰周りもお願いしま、」

胸を叩いて威厳を見せびらかしていたが、


「エアリスが生き生きとしたのは嬉しいけど、その話は食べてからにしよう。」


口元にソースをベッタリつけて、話し始めていたそんな格好のつかないエアリスを、悲しく思い、声を遮って止める。

「モグモグ、そうですね。」

エアリスはハルトの言葉を止めた本意も

気が付かないまま食事が終わった。



「魔法の鉄則の一つ

魔法とは永遠に不完全な物です、それは絶対です、よって魔法は完成された絶技には勝てない事です。」


「エアリス、その絶技って?」


「もっと下位互換の簡単なので言えば技ですね、グリーウルフを倒した時のアレなんて

技じゃ無いですか?」


「アレ?!アレは適当に即興でやったやつで、」

苦笑い

「では先に技の説明をしますね、

技とは、ステータスのどこにも書かれない、体に刻まれる技術です、体で覚えるまたは、感覚で作る者もいます。

明確に動きをイメージし、体をその動きについて行かせることができて、尚且つ最後に名前を叫べば完成します。これの練度を最大まで高めたのが絶技と言われるものです。」

「なるほど確かにあの時は、名前も…出てきた気が…する。」

あのダサい技の名前を思い出して、

顔が赤く変化していく。


「ハイ次に、魔法は……実は簡単に覚えられます。体を鍛える必要もなくて、イメージをして、魔法の名前がありますからそれを、技の名前を叫ぶように、言えばいいだけです。

 一概に魔法と言っても、魔法は大きく三つに分類されます、

属性魔法

水を出したり、炎の形を変えたり、風を操ったり、物自体の特性を引き出す魔法です。

でもまあなんか、目に見える物は大体コレです。


物力魔法

汎用性抜群らしいんですが、難しそうで私は知りません。物体を物理的に動かす動力として作用する?魔法だそうです。


それと、それ以外は

その他の魔法です。」ドヤッァァァ


分からないと言い切ったエアリスとその表情が合っていない気がするが、まあ…いややっぱり気になるよな!?


「最後だけ適当じゃ無いですか?」


「…でもそうとしか言えなくて、

回復もその他に分類されます。」


回復魔法この世界に来てから、何度かハルトの体は受けた気がするが。

「…想像できない」

現実の筋肉と皮、もっと言えば細胞の塊の体を回復、再生するって?と常識に憚られて想像ができない、

膝を擦りむいたら、血が滲んでその血が固まって瘡蓋ができて、傷はだんだんと長い時間をかけて治っていく物だと知っているから、こそ現実とゲームみたいな現実のギャップの中で、疑問が湧く。


「ステータスボードに物を収納するみたいな、機能ってあるのか?」


「無いよでも魔法のアイテムにはあった気がする。」


「ゲームのアイテムボードとかはない、アイテムであるってことは、マジックバックみたいな物か、

……ヘ〜〜そうなんだ、」

まだまだだ。

世界は広い、途方もない知識データの塊だ、これからの旅路まだまだ続くのに、今こんなのじゃと想像すると、自然と嬉しいため息が出てしまう。


『トゥルン、

この異世界で、また新しい物を発見した。」


あのとき、5本の指が力無く

でも均等に間を開けて、空に並んだ時、

ゲームをしようって言って、

目を開いたらツバキがいなくなった。


感傷の残る太陽が移り変わって、まん丸の月が浮かんでいる夜に、小さな葉っぱが動いて、光輝く鱗粉が降る。

「ふぁー眠い、ちょっと眠りすぎちゃったかしら?まあ良いでしょ……二度寝しよ。」

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