12話


 野原に組んでいた足を解き、動き出したハルトは馬車の後ろから、薄い茶色のカーテンを開き積荷を漁って日本語のカタカナでタベモノと書かれた大きな木箱を見つける。

木箱に手を近づけると、何かヒヤッとした空気に触れた、よくよく積荷を見てみると開けようとした木箱の木材自体がわずかに冷気を纏っていて、開くと適切に保存されている食べ物が、


「死活問題だーー!!」

森のモンスターも逃げ出す大声を聞いたエアリスが、わなわなと体を震わせているハルトの背後に顔尾を出した、そして不思議そうに聞いてくる。

「どうしたのーそんな大きな声出して。」


「食料の肉が干し肉しか、ないんだけど!」

衝撃の真実を怒ったように、一応食料を積んでくれた人いや、やった犯人、を思って声を荒げる。


「え、ダメだったの?、私からお願いしたんだけど、旅にはいつもコレ持って行ってたし、」

犯人みーつけた。

「いやかろうじて、かろうじて干し肉自体はいいんだよ、でも!」

ハルトは自分の覗き込んでいた木箱を持ち上げ、振り返りながら押し付けるように、目の前のアホの子に中を見せる。


箱の中身は、

容量いっぱい以上溢れるほどに、しき詰まった紅色の平たい歪な形の物体、少し後ろにいるものが透けて色が重なってグロい色をしてはいるが、少しだけ動物性の油のいい匂いがする。


「こんな木箱いっぱいにする必要はないだろ!干し肉は塩気もついてるし、独特な食感もあって、それ以外の料理にするのが難しいんだよ!」

「うーむ美味しいんですけどねぇ、モグモグ…なら狩りましょうか、ここら辺動物もいまフよ。」

ハルトが料理やバリエーションの観点から熱弁している中、エアリスは差し出された箱から干し肉を掴み取り、片手間に食いながら適当に提案してくる。

この容姿がなかったらぶん殴っていてもおかしくない、態度だった。

でもビンタはしてもいいと思う。


「あー…ちなみにその肉って何の肉なん…ですか、」

少し期待していないような、嫌な感が働いて答えてほしくないような、顔で聞くハルト、

それとは対照的に目を細めた笑顔で、

嬉しそうな声を漏らして言ってほしくない言葉を言う。

「ラヴィットです。」

「アーーー、やっぱりそうだったーー」


ハルトはかなり嫌そうだった。


旅の道に近い小さな丘の周囲から出て、壮大な平原に行ってもなお、膝を抱えて俯きながら座っていた。


「あっちの世界では愛護してる動物を食うなんて、それに何でよりによってウサギ…学校で飼ってた事もあるのに。」

エアリスが洗車をしていた時、何かが草原の方で小さい何かが跳ねていたのを思い出していた。

「無意識で発動してたのかわかんないけど、

勝手に発動していた感知スキルで、何となくかわいい動物のシルエットが見えた気がしたんだよ、だから聞きたくなかった、」

ボソボソボツボツと、本心の底から出てきた小言をつぶやき、何となく土に丸を何回も何回も描いて指の先を汚す、そんな中、

視界の中に弓を持ったエアリスが颯爽と走って、地面に伏したりして、チョロチョロと細かな動きをかなりの速度で行って、写ってきた。


地面に顔から突っ込んで地面に伏せたと思ったら、急に草の中から頭を上げて澄んだ緑色の瞳で遠くを見ていた、


「あッ 綺麗だ。」

エアリスが弓を引く所作は、イノシシの時とかに見たことがあるが、実際に弓矢を打つのは初めて見る。


「やっぱり所作が安定していて、綺麗だな…」


全身の力が抜けて、弓を持った片手以外はプラプラと風の力に浮かせられて揺られる、

元から大きかった胸がさらに膨らんで、息を強く吐いた、流れるような動きで、背中にあった矢筒の中から、矢を人差し指と中指の間でつまみ、弓につがえる。

腕に力が入る瞬間を見ると、もう弦がピンッと張り、細い一本の矢にエアリスの全身の力が溜まっていく、張り詰めた一本の糸が革鎧を僅かに弾いて、解放された。


ピピキュ……

草原に二つの声が鳴いた。



「あー嫌だーー……」


エアリスは嫌がっているハルトを気遣ってか、うさぎには容赦なく、皮を剥ぎ取り食べるのには必要の無い部位を切り、内臓を除去しては、近くを流れていた下流の川を使って水洗いまで済まして、くれた。


「まあ…やりますよ〜。」

目の前にある下処理をされた綺麗な肉を二つも見れば、何となく諦めのついたハルトは、ため息をつきながらも深青色のエプロンを身につけた。


「やっぱり異世界では価値観の違いもあるんだな、あのもうヨダレを垂らしてる人が特殊な可能性を捨てれば、……ヨシッ」


肉に味の浸透がよくなるように、フォークで細かに穴を開けていき、醤油と似た調味料を混ぜて酸味液体を作って、一旦コップに入れておく、

熱せられてきたフライパンに肉を皮目を下に焼き入れ、

肉の油がはじけてきた、皮目が淡く狐色になった時ひっくり返して、そして作っておいた調味液を和を描くように注ぎ入れる、

肉に絡めるように炒めて、肉にてりが出てきた頃、


胃を直接刺激する、美味しそうな匂いのする湯気が、キノコ雲を作って大量に上がった。

待っている人のよだれも大量に垂れていた。


「ハイ!出来ましたよ。」


うさぎの照り焼き 料理成功


白い皿に一人一切れ大きな肉を取る、最初はエアリスが一羽丸ごと取ろうとしたのを止めて、食卓についた。


「美味しそーー!ハルトハルト!もう食べていい?」


「…あっ、いいですよ、そう言えばいただきますの文化がないのか。」

ハルトは当然にあったものが無いことにも、気づき、また今改めて元の世界と異世界の文化の違いを思い知った。


「ハルトのところではそう言う文化があったの?なら、エアリスがいただきます!!」

「ハハ、俺もいただきます。」

少し言葉が足りなかったのか解釈の違う、掛け声に一瞬脳がフリーズしかけたけど、エアリスもそろそろ美味しそうな料理を前にして待てなかったんだな、と思っていると、自然と笑い声が出て自分も言った。


「ウマーー」

「ウメーー」

二人とも喜んで、さらに口つける勢いで食べて、口を汚して食べていたがそんなの気にせずに、モグモグモグ!モグ!と食欲だけに囚われて卑しく下品に食べ進んで行った。


そして料理の描写はできたが、この二人には

普通の食レポは期待できなさそうだった。

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