命の重さに胸が締め付けられる、最高峰の戦記物語

久々に凄い小説に出会ってしまった。
素直にそう思いました。

この小説の凄い所は、まず戦記物のエンタメとして極上の面白さを誇っているところだと思います。
初期状態だと2発しか回復魔法が使えない、か弱い衛生兵からスタートした主人公トウリちゃんが、さまざまな活躍を見せながら、本当にじっくりと少しずつ強くなり、出世していく過程は、成り上がり物の戦記物として凄まじい面白さを誇っています。

ですが、こうしたエンタメとしての面白さと双璧を成す本作のもう一つの素晴らしさは、何といってもストーリー全体から滲み出るとんでもない濃度の死生観、人生観にあると思います。

容赦ないストーリー展開の中で、次々と死に行く登場キャラたちのその死にざまに見える死への哲学、戦争というものの空しさ、やるせなさ、死に際になって見える本当の本性、死にゆく魂の輝き、そういったものたちが、本作を単なるエンタメ作品とは一線を画した「本物の名作」へと昇華させていると感じました。

自分も作家の端くれではありますが、本作はそんな自分が生涯をかけて目標としたいと思えるくらいのとんでもない素晴らしさを持った作品で、読み終わった後、無性に書くエネルギーが湧いてきました。

本作に出会えた幸運に、ただ感謝を。

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