第40話4月24日②

 午後は、順番を飛ばすようにお願いされたスイセンとのデートだ。さっそく街中を歩いていくのだが、スイセンから問いを投げ掛けられた。


「ん……。二択、選んで……。デートを楽しむか……障害を片付けるか……。」


 なんの二択だろうかと首を傾げていると、スイセンの言葉は続く。


「ん……。障害は今、片付けなくても……今日の内なら……時間的な制限はない……。障害を素早く排除することは……できない……。」


 スイセンが障害というのだから、早めに対処した方がいいのだろう。


「どっちを選ぶかを、実は分かっていてやってるだろう?」


「ん……。少しでも……一緒に居たかった……。私のわがまま……。じゃあ決定打……。私はデートを……選んでもいい……そっちがいい……。でも、アルスは……絶対に後悔することになる……」


「そんなのっ!選択肢なんてないじゃないか!スイセン!どこへ行けばいい!?」


「ん……。こっち……。分かってたけど……やっぱり寂しい……」


「スイセン……。今日出来なかったけど!でも、絶対にいつかやろうな!最高に楽しいデートを!」


「ん……。期待してる……」


 話しながら歩いているとすぐに着いたようだ。最初から誘導されていたらしい。どんな障害か分からないけど、用意したやつに会うことがあれば文句くらいは言ってやりたい。そうして突入すると、中には疲労困憊といった様子の様々な種族の人々が横たわっていた。


 これがスイセンの言っていた障害?どこかに敵がいる様子でもない。どういうことなのかとスイセンに視線を向けると。


「ん……。アルスはリリス様、カーミラ様、学園の順番で……連絡して……。私はここの人たちの……ネックレスを破壊する……」


 確かにここには、サキュバスや吸血鬼も居る。どういうことか分からなかったがスイセンが言うなら間違いないのだろう。言われた通りに連絡すると。


 リリス様からは、少し時間をちょうだい、すぐに向かうわ。と告げられ。

 カーミラ様からは、よくぞ見つけてくれた。すぐに行く。と返答され。

 学園からは、至急対応する。と返された。


 その間もずっとスイセンはネックレスの破壊を続けており、それが終わった頃にリリス様とカーミラ様が到着された。

 なんでも行方不明になっていた人達でありカーミラ様からは、また恩が増えてしまったな。と感謝され。リリス様からは、ちゃんとしたお礼がしたいから明日……いえ、明後日来てちょうだい。とのことだ。


 まさか、スイセンとのデートがこんな形で台無しになるとは思っていなかったがもう学園の門限が近い。そろそろ帰らなければならないことに悔しさを感じていると。


 スイセンが一枚の紙を取り出して見せてきた。

 それは許可印の捺された夜間外出許可証だった。


「ん……。あらかじめ、申請しておいた……」


 思わずスイセンを撫で繰り回してしまう。その間、スイセンはなされるがままだった。


「ありがとう。スイセンには、本当にいつも助けられている。これからもその力で俺たちを導いてくれ。好きだ、スイセン」


「ん……。私も……好き……」


 だんだんと辺りが暗くなっていくなか、いつもの広場に向かう。着いた頃には完全に暗くなっていた。許可証があるとはいえ、そう余裕はない。そのままプレゼントを渡す。


「ん……。ありがとう……。さっそく着けてみる……」


 そうしてスイセンの首には、雪のように白いマフラーが巻かれていた。


「やっぱりスイセンには白が似合うな」


「ん……。嬉しい……」


 そのあとはベンチに座る。星空を眺めながら今度、機会があれば星座でも教えてもらおうと考えていると、目につく星々があった。一際強く光り輝いている星の周りに寄り添うように。黒みのある赤、黄色、真っ白、青、薄紫、赤、銀のように見える白、夜空よりも黒い……あれは本当に星だろうか。そんな星達が輝いている。まるで俺たちのようだ。 


 スイセンにもそちらを指差して教えると喜んでくれた。今度見るときは全員で揃って見られたらいいと思う。そうやって俺たちは時間までその星たちを眺めているのだった。

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