第31話4月18日①
今日は、休日で午前中はアスターとデートだ。
というわけで街中へ出たのだが。
めちゃくちゃ注目を受ける。というのもアスターは練習の結果、服装だけを変身することが出来るようになっており道行く人のなかで、あのファッションいいっす!と思う度に服を写し取っているのだ。アスターは元々お洒落好きだったが、この能力を得てからは拍車がかかっている気がする。ネモフィラの写真撮影巡りの他の時間に、カトレアがよく連れ回されている。
今度、またカトレアを労ってあげようと思う。
そうして何度も服を写し取っては、どうっすか!?と見せてくれるのだが全てに対して似合うと思うよ。としか返せない自分の語彙が恨めしい。
なにせアスターは可憐な少女だ。実際にどんな服を着ようと大抵着こなしてしまう。もっと色々な言葉で賛辞を送りたいのだが、いざ目にすると不安そうな顔をしながら見せてくるので条件反射的にその言葉が出てしまうのだ。
それでもぱぁっと表情を明るくして、にこにこと喜んではくれるのだが。
そんなアスターもたまに前衛的というか、奇抜なファッションを見せてくるときがある。
そういうときは、かなりオブラートに包んでもっとアスターらしいアスターに似合うような服があると思うよ。と伝えると、やっぱりそうっすよね!別の服にするっす!とあっさりと変えてしまう。
アスターは時々、こうやってこちらを試すというか悪戯気分も含まれてはいると思うのだが探ってくるときがあるように見受けられる。俺のことを信頼してくれてはいる。それでもどこか心配になってしまうのだろう。
アスターがそんな性格になってしまったのは、俺たちと一緒にいる前の環境が原因だと思われるのでアスターが満足するまでとことん付き合う腹積もりだ。
アスターが望むのなら、いくらでもなんだってやるつもりである。もう俺にとって、俺たちにとってアスターは大切な存在なのだから。
そうして歩いていると、アスターが何かの看板を見て、この店に入るっすよ!と伝えてきた。
特に拒否する理由もないので共に店に入る。
そこでアスターが大きな声で。
「カップルジュース一つくださいっす!」
何て言うものだからまた注目を浴びてしまった。いくつもの微笑ましそうな視線が俺たちに突き刺さり、アスターもさすがに恥ずかしくなったのか縮こまっている。
そのうちに運ばれてきた飲み物は、ハートの形に交差している二本のストローが一つの飲み物に差してあるというものだった。
「これを二人で同時に飲むっすよ」
「それはまた、なんとも恥ずかしい気分になりそうな」
「それがいいんじゃないっすか!じゃあいくっすよ」
と言うので、ストローを咥えて飲んでいく。甘酸っぱいフルーツのジュースだ。アスターはと見てみると、顔を真っ赤にして目が合う度にそらしてはまた目が合うということを繰り返している。やっぱり恥ずかしいんじゃないか。何て思っているとズズーッとストローが飲み干したことを伝えてきた。そこで口を離す。
「やっぱり、ちょっと恥ずかしかったっす。」
「だろうね。俺も恥ずかしかったよ」
「その割にはずっとこっち見てたじゃないっすか!?」
「アスターが目をそらすからだよ。多分、そうじゃなかったら俺が見てられなくなったと思う」
「そういうものっすか?」
「もう一回やって確かめてみる?」
「それは……いや、やっぱり無理っす!あたいの心臓が持たないっす!」
「そっか。残念」
「む、からかったっすか?」
「いや、ああいう風になっているアスターも可愛かったなって」
「やっぱりからかってるじゃないっすか!?」
そうやって表情をころころと変えるアスターを見て思う。あぁ、やっぱり。
「アスター、好きだ」
「ひぇっ!?えっとえっと、あたいも……です」
「ありがとう。嬉しいよ」
「なんか、すっごく余裕じゃないっすか!?不公平っす!」
「そんなこと言われても。ねぇ?」
「なにがねぇ?なんすか!?」
「いやぁ、アスターは見ていて楽しいな」
「どこまでからかってて、どこまでが本気だったんすか!?」
「なに言ってるの。からかってないよ、全部本気」
「え!?その、それは……ありがとうっす」
「アスターは本当に可愛いなぁ」
「うがー!?これじゃ無限ループっす!」
「こんな無限ループなら、俺は歓迎だな。いつまでも可愛いアスターが見られる」
「うぅ……もうツッコまないっすよ」
「それは残念」
やがて俺たちは店を出て街を歩いていく。そして、いつもの露店に向かい、商品を選んで銀貨を1枚渡す。去ろうとすると。
「今日はもう店を閉めちまうんだ。悪いな。今日ももう一人居るんだろ?買ってってやんな」
と言うのでもう一つ選んで銀貨をもう1枚渡す。
そのあとはいつもの広場に行く。そこで先ほど最初に買ったものをアスターへ渡す。
「実際にこうやって渡されると嬉しいっすね。着けてもらってもいいっすか?」
いいよ、と答えてアスターに着ける。
アスターの首にはどんなファションにも合うような、シンプルなデザインのネックレスが光を反射して輝いていた。
「これに最高に合うファッションを研究していくっすね!」
「見るときを楽しみにしてるよ」
「任せてくださいっす!」
そこからはベンチに座って、静かに。とはいかなかった。どうしてもアスターの反応が可愛くて構ってしまうのだ。
そうして時間になるまで、俺たちは話し続けるのだった。
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