第30話4月17日

 そうして、日付が変わり今日。玉藻前様のところに来ている。


此方こなたのところから其方そなたたちが突然消えたのは驚いた。突然、神通力の天耳通の範囲から消えていなくなるのだから心配したのだ。幸いそう時間を置かずにネモフィラ殿が説明に訪れたことで混乱は少なかったが」


「すみません、玉藻前様。俺が召喚をしてしまったばかりに」


「構わぬ。契約も結んでいるようだ。ネモフィラ殿への礼と相殺する形にはなるが不問にしようと思う。異存はあるか?」


「いえ、ありません。寛大な配慮ありがとうございます」


「構わぬ。助かった猫又はともかく、修行を積んだ九尾が居なくなるのが痛手ではないわけではない。しかし、契約を結んだ以上はすでに其方の召喚獣だ。好きにするがいい。顔が見れて安心した。たまには見せに来るといい。通信具を持っているだろう。そこに此方の登録をした。あまり暇があるわけではないが、此方に用があれば連絡するといい。ではさらばだ」


「ありがとうございました」


 ナデシコとは違い金色の九尾である玉藻前様との会合は、随分とあっさりとしたものだったが終わりを告げた。

 今日の朝に、ナデシコとクロユリの分の通信具もリリス様から届いていたので全員が玉藻前様との連絡先を手に入れたことになる。

 こうして、俺たちは玉藻前様の前から辞した。


 学園に帰ってからは、ナデシコからそれぞれの力について教えてもらうことになった。


「では僭越ながらウチが教鞭をとらせてもらうなぁ、よろしおすなぁ。力にはいくつもの種類があるのは、ご存知どすなぁ?精力、魔力、闘気、妖力、霊力、仙気、神気。ウチが知っているのはこれだけどすけど、もしかしたら他にもあるかもしれなおすなぁ」


 そうして力について色々と教えてもらった。

 まずは精力。生物なら誰でも持っている。精気と言うこともある。

 契約に関係するもの以外で死ぬのはこれが無くなった場合とされている。老衰に溺死、病気や呪い、他者からの吸収や傷によるものなどほとんどの場合で説明が付くためとのこと。


 溺死と傷によるもの以外は、何となく徐々に減っていくイメージが出来るので理解もすんなり出来た。しかし、この二つについてはよく分からないので詳細を聞いたところ。

 溺死は最初は緩やかに減るが、途中でいきなり大きく減っていって無くなるとのこと。


 俺は経験が無いのだが、普通は水棲生物や空気を蓄える何かしらの方法がない限りは苦しくなって思わず水から出てしまうらしい。

 俺の場合は精力が有り余ってるから、逆説的に呼吸しなくても平気なのではないかとのこと。くれぐれも何時間潜れるのか試してみよう、などと思わないようにと釘を刺されてしまった。スイセンの試練のときに、息を止めていたのは話さない方がよさそうだ。無闇に悲しませてしまう。


 では不死身の存在はどうなるのか、となる。

 吸血鬼に代表される不死身の存在はというと、なんと休眠状態に入り何かしらの方法で水上に出るまで眠り続けるという。

 不死身の存在が精神的にはともかく、肉体的に滅びて復活しなかった記録は確認されていないそうだ。


 今度は傷によるものについての話なのだが、こちらはほとんど分かっていないらしい。というのも、何かしらの傷を負えば精力が減少するのは共通する。だが種族によって幅が広すぎて、有力な説はないらしい。

 ある種族は重傷を負って、治療して体は治ったのに死んでいることがあったり、首を落としてもくっつければ再生したりと本当にバラバラなようなのだ。

 そうして結論付けられたのが、精力によるもの。という今の主流な言説とのこと。


 ただし、この言説にも例外があり死霊系と呼ばれるものが精力がないのに存在していることについてだけは説明がつかないとのこと。

 その代わりに大抵は聖水で滅ぶのは確認されているが、これも仕組みは分かっていないらしい。



 魔力とは、魔法を使うのに必要。持つにはほとんどが血筋だが、今の世の中では持ってない方が珍しい。


 闘気は、肉体を鍛えていれば増える。基本的には肉体強化に使うが威圧することも出来る。



 霊力、オカルトと呼ばれるような説明不可能な現象には大体関わってくるとされている。スイセンやネモフィラがよく感じ取ってるのも第六感と呼ばれるこの力だそうだ。死霊系は例外なくこの力を持っているのも理解不能なものの代名詞のような力らしい。霊力の一部に呪力というものがあり、呪ったり呪術を使ったりするのに使うそうだ。


 そして仙気、特殊な修行を積むと得ることが出来るとされている。基本的には精神統一をして得るようだ。他の力よりも上位に値する力になるという。


 この力があると神通力という力が使えるようになる。ある広範囲の中であれば、どんなに小さな音も聞こえる天耳通。他人の心を読める他心通。高速移動が可能になる神足通などがあるらしい。


 俺に召喚されたときにナデシコはこの他心通を使っていたとのこと。特に読まれて困るものでもないと、気にしなくていいと伝えたところ。普通は嫌がるのに不思議な人どすわぁ、と言われてしまったが。


 最後に神気、神格を持つことで得られる。具体的な習得条件は不明だが、仙気のさらに上位に当たる力で仙気を鍛えることで取得することがあるのではないかと考えられているらしい。この力を持つだけで存在の格が上がるのだとか。


 授業で習わなかったことが沢山あって、とても勉強になった。

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