第20話4月10日

 昨日、ガーネットとトレーニングをしてから。今日になって精力がかなり成長していると皆から報告があり、リリス様へ相談してみることになった。


 リリス様からは、消費が増えたのを体が感じとってより早く成長するようになったためではないかとのことだった。そもそも器の上限がここまであるのも異常で複数契約をしている者では多い者でも5人だったらしく、それも真名契約ではなかったという。真名契約を結んでいる人数では、ほぼ間違いなく最多でしょうね、とも言われた。


 昨日は何か変わったことをしなかったか、と問われたので正直にトレーニングを1日していたと伝えると本来増えるはずの闘気が増えていないのも異常であると言われてしまった。

 両親の種族を聞かれたが、孤児なので知らないことを伝えるともしかしたらそこに秘密があるのかもしれないとのことだった。


 なので学園長に自分の出自を調べてもらえるように依頼をすることと、また召喚獣を召喚することでリリス様とのお話は終わった。

 そうして学園長に依頼をして学園長室から出た瞬間にまたしてもローナ先生から声を掛けられた。


「あっ、アルス君だ!私は召喚の度に会ってるから、そんなに久しぶりって感じはしないけど。毎日出てくれてた授業に全く顔を出さなくなっちゃったから、寂しく思っている先生も居るんだよ?」


「すみません、ローナ先生。勉強は召喚獣の皆に教えて貰っているんです。彼女たちが言うには、学園の教科書に書いていることはまだまだ発展の余地があるらしくて──」


 そこまで口にして、しまったと思った。正直に話しすぎた。実際、ローナ先生の目が剣呑な色を宿している。


「ふーん。そういうことを言っちゃうんだ。それならアルス君には特別に、私からテストを受けて貰おうかな!」


 そのまま連行されていってしまった。やらかした、とも思うが同時に今の自分の学力を計る良い機会かもしれない。

 どんな問題が出されるだろうと考えながら着いていくのだった。


 そして、ローナ先生がぱぱっと仕上げたテスト用紙を受け取り職員室でテスト開始だ。周りの先生方の視線が気になるが、どうにか無視してテストに向き合う。


 最初の問題は、あなたのしている契約について解答せよ。という問題だった。真名契約についてと、複数契約について知っていることを解答する。


 次は、契約主と召喚獣の違いについて解答せよ。という問題。リコリスと、カトレアから教えて貰ったことを書いていく。


 契約主になる人物と召喚獣になる人物の差は不明。同じ両親から生まれた兄弟なのに分かれることもあったらしい。判別はある日突然判別できるようになる。


 そこまで書いて余白がかなり余っているので、サモンズ学園で契約主と判別されたらどうなるかも書いていく。


 毎年1月1日に世界各地でどちらか判明していないものは判別を受ける。転移魔法を使ってその日のうちに、サモンズ学園に集められる。いろいろな混血が居るため学園に通う年齢もバラバラで、新入生が数十人の年もあれば数十万人の年もある。


 それでもまだ余白があるので学園での授業について分かっている範囲で書き連ねる。


 召喚を行うのは新年度である4月1日。学年は3学年。

 授業は契約に関するものがほとんどで、力を伸ばす授業もある。他にも、言語学や算数、歴史に理科などの科目。料理や裁縫などの生活に密接に関わる授業の名前を挙げる。

 三ヶ月間、全ての授業に出ていたのでこれくらいは書ける。


 余白もほとんどなくなったので、学内ランキング戦については軽く触れて次の問題に取りかかる。


 あなたの契約している召喚獣の種族の特徴について解答しなさい。これは今まで会話してきた中で知ったことをそのまま書いた。

 途中で余白が足りなくて、別に紙を用意してもらうことになってしまったが。


 あとは常識についての問題や言語、計算などを簡単に解いて提出する。採点をしている先生方の会話が密かに漏れ聞こえてくる。


「真名契約というものがあったのか。俺の召喚獣にも真名があるのかな」

「複数契約についても新しいことが書かれている」

「確かに興味深いが、この契約主と召喚獣の違いというのは能力の違いについてじゃないのか?」

「これはちゃんと指定しなかったローナ先生が悪いな」

「しかも本来ならあなた、とするところが契約主と誤記してもいる」

「それでも、よく書かれているのは流石アルス君だ」

「ちょっと!この種族のところの記述が本当なら授業内容を見直さないとだわ!」

「我々も知らなかったことが多いな」

「一般問題も完璧だ。いっそのことアルス君に教鞭をとって貰うか?」

「卒業後ならともかく、学生にさせるのは問題だろう」


 契約主と召喚獣の違いというのは、俺と皆の能力の違いだったのか。だからあんなに余白が取ってあったんだな。少し申し訳ないが、それはそれで問題なかったようなので安心だ。

 ローナ先生がこちらに来る。どんな結果になっただろうか?


「アルス君。協議の結果、アルス君は既に私たち教師陣が教えることの出来るレベルを越えていることが分かりました。今回は強引に連れてきてしまったけど、とても有意義な時間になりました。ごめんね?そしてありがとう!」


「いえ、大したことではありませんから。それと、ローナ先生、召喚契約の間を使わせていただきたいのですが」


「アルス君の精力値は凄いからね!皆が太るようなことになったら大変だもんね!今日の内に手続きを終わらせちゃうから、明日ならいつでも大丈夫だよ!」


「ありがとうございます」


 ローナ先生には、器を越えるほどの大きな力を持つと変質するという話は伝えていない。まだ解決していないのに、余計に心配させてしまうと皆で話し合った結果だ。

 心苦しいが、伝えたらきっと色々と無茶をさせてしまうだろうと思うのでぐっと飲み込む。

 そのあとも色んな先生に声を掛けられながら部屋を出る。思っていたよりも時間を使ってしまったな。

 皆のところへ帰ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る