第19話4月9日

 今日はまた、リコリスから俺の過去の話をしてほしいとのことでアスターとガーネットに話をすることになった。

 リコリスは生活魔法を駆使して家事を、カトレアとスイセンはリコリスが模擬戦をしたミスリルゴーレムに挑んでくるそうで席を外すそうだ。


 そうして、話をした結果。アスターもガーネットも号泣する事態となった。

 言葉にならないながらもずっと一緒に居ると伝えようとするアスターと、ただただ涙を流すガーネットをどうにか落ち着かせることができた。なんだか絆が深まったように思う。

 そして、改めてリコリスを失わずにすんだことにも感謝したい。アスターの居るところだとまた罪悪感を刺激してしまうかもしれないので、こっそり本人にだけ伝えようと思う。


 話が終わってもまだ皆が帰ってこなかったので、別行動をすることにした。ガーネットはトレーニングをするというので着いていく。アスターはもっと変身を完璧にするために皆の様子を観察しに行くらしい。


「わざわざ僕に時間を取らなくてもいいんだよ?仮契約なんだし、もっと他の皆に時間を使ってあげなよ」


「さっきも話したけど、俺は精力以外の力が使えないんだ。最近は授業に出てないから体も鈍っているだろうし。何よりアスターの変身が見破れなかったのが悔しかったっていうのもある」


「あはは!なにそれ。だから僕と一緒に居ようって?まだまだ出会ったばかりなんだし、誰も怒ったりもしないと思うよ」


「いや、ガーネット様は怒るんじゃないかと思ってる」


「あー、ガーネット様はね。あの人意外と親バカというか、そういうところあるよね。僕もあそこまでとは思ってなかったけど」


「実際、ガーネット様ってどういう方なんだ?」


「僕もそんなに話したことがある訳じゃないけど……。でも子供が生まれたら、必ず見せにいかないといけないらしいよ?理由までは知らないけど」


「子供が好きだっていうことなのかな?」


「どうなんだろうね?その後は基本的には放任主義だし。誰かを甘やかしてる、っていうのは聞いたことがなかったから僕もああいうことになるなんて思わなかったし」


 ガーネット様にとってガーネットは何か特別だった。いや、特別になったということだろうか?


「あ、でもね。ひとつだけとっても不思議なことがあって。誰もガーネット様の契約主を見たことがないんだって。仮名での命名契約だってことは有名なのにね」


 それは確かに不思議かもしれない。そういえば、リリス様の契約主も知らないな。一体どんな方なんだろうか。


「だから、僕たちドラゴニュートの間ではガーネット様の契約主に会わせてやる~なんて言うやつは詐欺師だから信じちゃダメ、って小さい頃はよく言われたよ」


 そんな風になるほど、知られていないのも不思議な話だ。機会があれば聞いてみたい。あるかどうかも分からないが。それにそういうことなら、既に誰か聞いているんじゃないだろうか?


「あ、今、誰も聞かないのかって思った?聞こうとしたことはあるらしいよ。でも誰も聞けなかったんだ。なんでも聞こうとする瞬間にそれを悟られてしまうのか、威圧されてしまうんだって」


 それは確かに聞けないだろう。あの威圧は相当なものだった。


「そうそう。アルスはすごいよね!あの威圧を受けたら、誰も何も言えなかったって聞いたよ。直接受けた訳じゃない僕も、何も言えなかったし。それなのに、言葉を返したのってとっても凄いんだよ!」


 そうだったのか。そういうことなら、少しは俺も自信を持ってもいいのかもしれない。


 ちなみに、どうして囚われていたのかと聞いたところ。

 ご飯につられちゃって、と目をそらしながら回答された。

 そんな風にガーネットと話をしながら、1日トレーニングをして過ごした。


 こっそりリコリスに感謝を伝えたところ、私も離れるようなことにならなくてよかったです、と涙目で返されてしまった。

 これからも皆と一緒に居られる幸福を、噛み締めていようと思う。

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