第11話4月4日①

 その連絡は、カトレアが眷属であるコウモリをせっせと精力消費のために作成しているときにきた。

 ちなみに、吸血鬼の血族を生み出す眷族化とは違って眷属であるとのこと。


 なんでもリリス様が俺たちを呼び出したいとのことだった。正直、いよいよこの時が来てしまったかという思いしかない。緊張と共に、学園に設置してある転移魔法陣からリリス様の居られる世界へと転移する。


 転移した先には、サキュバスらしくかなり露出の多い妖艶な美の化身といった存在が居た。


「いらっしゃい。聞いたわよ?なんでも、ミスリルゴーレムの魅了に成功したとか?私以外に出来る娘が生まれることはないのかと思っていたから、とっても誇らしいわぁ。」


「光栄です、リリス様」


 緊張から何も言えなかった俺の代わりにリコリスが答えてくれる。


「そこまで緊張しなくても、取って食べたりはしないわよ?別の意味で食べちゃいたいとは思うけど」


「リリス様におきましては、ご機嫌麗しゅう──」


「あーだめだめ、そんなに堅苦しくなくて自然体でいいわよ。というか、私みたいに上位の存在になるとそういうの一切気にしないって覚えておいた方がいいわ。ほら、リラックスリラックス!」


「そういうことでしたら、普通に話させていただきます」


「まだちょっと固いけど、これ以上は酷かしらね。最初に言ったけど、私とっても嬉しいのよ。ねぇリコリス、あなたはどうやってやったの?」


「私はアルス様のブーストのお陰なので、なぜ出来たのか自分でも分かっていません。申し訳ありません、リリス様」


「そうなの?よっぽどあなたの精力が多いのね。いいわ、説明してあげましょう。魅了はまず視覚から干渉して脳の思考回路を操作するものよ。無機物はこの視覚と脳の思考回路の仕組みが全く違って意思そのものに干渉しないといけないから、少し前までは私しか魅了に掛けられなかったのよ。死霊系も肉体が死んでいるから似た理由で効き辛かったりするわ。かなり簡潔に話したけど、理解できたかしら?」


「ありがとうございます!リリス様!次はもっと強力な魅了ができると思います」


「それならよかったわ。これ以上は自分で試行錯誤して学んだ方がよくなるわ」


 いまでさえ、無機物を魅了できるほど強力なのにリコリスは一体どこまで目指す気なんだろうか。そう少し遠い目をしていると、リリス様は次の話題に入ったようだ。


「それにしても、本当に精力が多いわね。困っているようだったら私の方から相性の良さそうな娘を紹介しようと思っていたのよ。その矢先に……。いえ、なんでもないわ。とにかく、既に複数契約をしているなら私から紹介するよりも次の召喚をした方がいいわ。それで少しは猶予が出来るはずだから、リコリスも羽を伸ばしていいわよ。あ、これサキュバスジョークね」


 ウィンク付きで仰られたが笑いどころが分からない。そっとリコリスに目配せしてみるが、顔を赤くするだけだ。この場での説明はしてもらえないらしい。


「それでなんだけど、もしよかったら召喚の文言を教えてくれないかしら?アドバイス出来ることもあるかもしれないわ」


「そういうことでしたら、是非お願いします。我求めるは異界からの召喚者なり。我と共に歩み、共に滅ぶものなり。我が言葉を聞き届けしものよ、我が力を依り代にしその姿を現せ。『サモン』です」


「よく考えたのね、いい文言だと思うわ。複数契約に合わせるなら『我ら』と複数系にするだけでも全員に相性のいい相手になる確率が上がるわ。後は『契約を求めるもの』と入れれば、複数契約を望んでいると伝わって話もスムーズになると思うわよ?だから新しい文言は、我ら異界からの召喚者との契約を求めるものなり。我らと共に歩み、共に滅ぶものなり。我が言葉を聞き届けしものよ、我が力を依り代にしその姿を現せ。『サモン』ってところね」


「ありがとうございます!リリス様!」


「ふふっ。そこは素直に喜んでくれるのね。リコリスがちょっと羨ましいかも。いいわね、気に入ったわ。通信具を渡すからなにか困ったことがあればいつでも連絡をちょうだい。人数分、いえこれから召喚する娘も含めて渡しておくわね」


「重ね重ね、ありがとうございます!」


「いいのよ。これからも召喚獣たちと仲良くね」


 それに強く頷き、はい!と返答する。そのあと通信具をいただいたので学園に帰還する。

 次に召喚されるのはどんな存在なのか。期待を胸に抱きながら。

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