第10話4月3日④

「お帰りなさい、アルス君!それじゃ早速、種族と名前を聞いてもいいかな?」


「はい、彼女は吸血鬼のカトレアです」


「吸血鬼のカトレア……と。カトレアちゃん、アルス君のこと頼むね!」


「うむ、妾に任せるのじゃ!」


「本当なら、アルス君に珍しい複数契約の話を聞きたいんだけど。まだ昨日アルス君達が殿堂入りしたことでバタバタしててね。時間が取れないんだ。だから私は戻るけど、アルス君はしっかりコミュニケーションを取ること!召喚獣が増えたからってないがしろにしちゃダメだよ?」


「はい。それはもちろん、そのつもりです」


「ならよし!」


 そう言ってローナ先生は戻っていった。

 俺たちも部屋へ戻ることにする。色々と聞いておきたいこともあるし。


 そうして戻ってきたので、色々と話を聞くのだが。その前に、カトレアとの常識の擦り合わせだけはした。リコリスと同じく概ね違いはないそうだ。

 ということなので早速、本題に入ることにする。

 まずは色々と知っておきたい真名について。


 真名とは召喚獣の一部が持っているとのこと。召喚獣と判別された際に、真名を持つらしい。

 サキュバスと吸血鬼の場合は種族単位で真名を持っている珍しい種族で、生まれた際には真名を持っているそうだ。同族の中では、特に名前が分からなくても生活するのに不便はなかったらしい。


 ローナ先生にいつも教えていて疑問に思っていたのだが、ローナ先生は試練を受けていないのに普通にリコリスとカトレアの真名を呼んでいた。これはどういうことなのかというと、既に真名契約を結んでいれば他の人にも真名を名乗れるらしい。そのため、他の種族と関わる時は真名契約を結んでいるものが対応するとのこと。

 リリス様やカーミラ様も同じ例だという話だ。


 また、リリス様やカーミラ様などのように真名が有名になると力が強まるそうだ。

 少し話が逸れるが、有名になることで強くなる例は他にもあり。仮名である命名契約であるにも関わらずドラゴンであるガーネット様は、真名契約と同等の力を持っていると言われているらしい。


 次に真名契約をするとできることで、まだ俺が知らないものを聞いてみると。

 まずは真名で縛るということが出来るという。

 これはどういうことなのかというと、真名に命じることでその命令を絶対に従わせるというものらしい。

 それを聞いた瞬間に、俺は絶対にそんな力は使わない!と宣言しておいた。リコリスとカトレアには微笑ましい顔で見られてしまったが、撤回するつもりはない。

 彼女たちの意思を無視して従わせるなどしたくないのだ。


 次に聞いたのは、真名に誓うことについて。

 守るためには力が増すが破れば死ぬと聞いていたのだがこれは正確ではないらしい。

 破れば死ぬのであれば、カトレアが俺達を守れなかった場合に死んでしまうことになる。俺はそう認識していたのだが、これは実際には誓ったことに背くように行動すればということらしい。


 具体的にはリコリスの場合は、意図的に世話をしないといったこと。カトレアの場合は守ることができたのにあえて見過ごすといったことをしなければ問題ないとのこと。

 それなら、模擬戦はどういう扱いになるのか聞いてみたところ。それは模擬戦を行うことによって力を増し、成長によって結果的に自身を守れるようになるから問題ないとのこと。ただし、命の危険がある事故であると気付いたのに何も行動を起こさなければ違反したことになるだろうとも告げられた。


 真名に誓うことの別のリスクとしては、真名に誓ったことはその後その内容に人格が引っ張られるらしい。実際にどういった変化になっていくかまでは不明とのことだった。

 また、真名に誓うことは直感で浮かぶことが多いとのこと。本質に沿っているためと考えられているそうだ。それでもある程度の種類から選ぶことが出来るとのこと。

 二人が真名について知っていることは以上とのことだった。


 次に俺が召喚できる種族について教えてもらうことにした。


「サキュバスと吸血鬼はもう召喚しているので、当然ご存知ですよね。これらは、例えば悪魔などの魔に属するものの分類になります。他にも以前に話に出たことがあったように、触手やスライムなんてものもここです」


「ゴーストなどの死霊系、詳しくまでは知らぬが妖怪と呼ばれる者達も呼べるそうじゃな。後は妾やリコリスも出来るが、供給される力の変換が出来る者じゃな。とはいっても、妾は自分の吸収した精力を魔力に変換することしか出来ぬし」


「私は精力以外の力を精力として吸収することしか出来ないので、特には意味ないのですよね」


「なるほどな。これからは、そういった存在が召喚されるのを想定しておけばいいんだな。二人とも、ありがとう」


「とはいっても、妾たちの知らぬ存在も居るやもしれぬ。油断はできぬのじゃ」


 最後にカトレアの出来ることを聞いたのだが。

 闇魔法はリコリスと同程度、吸血鬼の固有魔法である血魔法で武装や服を作るらしい。

 武装はランスと盾とのことだ。


 血液中の二酸化炭素から魔力で炭素を取り出して酸素を戻すまではなんとか理解できた。けど、結合がうんぬんをまた魔力で~辺りから分からなくなってしまった。

 もっと基礎から学ぶ必要があるそうだ。とりあえずカトレアはスタミナが多いことと、滅多なことでは傷付かないことだけ覚えておけばよいとのこと。

 そこまで話して今日のところは終わりとなった。

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