第3話4月1日③

「アルス君!時間が掛かっていたようですが問題なく契約できたようですね!よかったです」


「ローナ先生、ご心配をお掛けしたようですみません。無事に契約できました」


「それじゃあ召喚獣の登録をするので種族と名前を……やっぱり彼女はサキュバスなのかな?」


「はい、サキュバスのリコリスです」


「サキュバスのリコリス……と。よろしくねリコリスちゃん!」


「はい、よろしくお願いします」


「色々とアルス君から聞きたいこともあるんだけど、アルス君が最後だったからごめんね。次の組に回さないといけないんだ」


「いえ、それはこちらこそ遅くなってすみませんでした」


「ううん、それは本当に気にしないで。契約はね100人居たら100人とも違うこともあるものだから、時間がかかることは全然大丈夫なの。その代わりにどんなお話をしたのか、今度聞かせてね。それじゃあ皆!移動するよ!移動したあとは自由時間です。それぞれの召喚獣とのコミュニケーションをしっかり取ってね!」


 ローナ先生にどこまで聞かれるんだろう。まぁなるようにしかならないか。リコリスと色々と話をしよう。まずは部屋に戻ろうかな。


「ここが、アルス様の部屋ですか」


「そうだよ。なにもない殺風景で、面白味のない部屋でごめんね」


「そんなことはありませんよ。たしかに物は少ないかもしれませんが、どれも大切に使われているのが見受けられます。教科書だってこんなにぼろぼろになるまで読み込んでいらっしゃるようですし、布団や洋服も修繕した後が見られます。これはアルス様が手直しされたのでしょうか?今後は私にお任せくださいね。一通りの家事はできますので。それにこちらは──」


「ちょっと!?その辺で勘弁してくれると……」


「そうですか?まぁ後にしましょうか。さしあたって、なにからすればよろしいでしょうか?」


「そうだね。まずは座って話をしようか」


 ベッドに座り、リコリスに椅子に座ってもらう。


「さて、何から話そうか。とりあえず家事は一通り出来るって?」


「はい、炊事洗濯から掃除に繕い物までなんでもござれです!本来はそこに房中術といったご奉仕なども含まれるはずだったのですが……アルス様の精力が高過ぎて……ですね。お相手できないのですよね……。えっちの出来ないサキュバスの存在意義って……いったい……?」


 サキュバスとして決して譲れないアイデンティティらしい。この話題を続けるのはまずそうだ。なにか別の……。


「そういえばサキュバスって戦闘能力としてはどういうものがあるんだ?」


「戦闘能力ですか?まずはなんと言っても魅了ですね。あとは各自の適性によって魔法を使ったり、武器を使ったり色々ですね」


「魅了か。有名だけど具体的にどんな風になるんだ?」


「具体的に……ですか。ある程度個体差というか各自の能力によって変わってくるといいますか。魅了の掛かり具合によってどれだけ操れるかが変わるというのが正確かもしれません」


「あんまりはっきりとは分かってない感じなのかな?」


「そうですね。同じ相手に掛けるにしても耐性を得たりすることもありますので。完全に掛かってる相手には、その魅了を掛けた者を上回らなければならないといったこともありますし」


「なるほど。じゃああまり期待しない方がいいものなのかな」


「基本的にはそういうものですね。掛かったら儲けものという感じです。楽ですしね。ただ私の場合はアルス様のブーストが掛かりますので、大体の相手には効くと思います」


 ブーストとはなんだろうか?疑問に思ったのが伝わってしまったようで。


「ブーストとはサキュバスの扱える技術の一つですね。精力を一時的に多く取り込むことで、強化をするというものです」


「そういうことも出来るんだ。頼り過ぎない程度に使っていくのがいいのかな?」


「そうなると思います。まだ現段階で戦闘をしていないので断定は出来ませんが」


「それもそっか。リコリスは魔法や武器は何を使うの?」


「魔法は闇魔法がほとんどですね。あとは生活魔法の分類です。武器はあまり扱ったことがないですね。ナイフが少し使える程度です」


「闇魔法とナイフね。闇魔法と言えばデバフってイメージなんだけどあってるかな?」


「その認識で間違いはありませんよ。大体の闇魔法がそうですから。私は他に影を実体化させて、武器にしたりします」


「そういうことも出来るんだ。じゃあナイフを用意したりとかは?」


「私の方で出来ますので特に考えなくてもよろしいかと」


「なるほど。そう遠くない内に学内ランキング戦も始まるし、それまでにリコリスがどれだけ動けるのか知りたいな」


「学内ランキング戦……ですか?」


「そう。学内ランキング戦。召喚獣の強さを競うものだね。皆が皆、戦闘の出来る召喚獣ではないけれどその中でも上位を目指す人がほとんどだね」


「上位になるとなにか特典が?」


「もちろんあるよ。成績に加点されるし、何より目に見えて優遇されるからね。学費が無料になるのは序の口で、学園の口利きで色々と要望することが出来るらしい。過去には王族の仲間入りをした、なんて記録もあるそうだよ」


「それは素晴らしいですね!」


「その分、上位争いは苛烈らしいけどね。目指す価値はあると思うよ。明日からそのための模擬戦も始まるしね」


「頑張ります!」


「期待してるよ。」

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