第4話 発見と現実
道中カースの街を通過したが、ラルファンドのような活気はなく人々の表情は虚だった。
『レジスタンスの街はラルファンド以外にもあるの?』
『いくつあるかわらかないけど、今向かっているのはシーサという街だ。俺が知る限りレジスタンスの街の中で一番大きい。レジスタンスなら一度は訪れるべき場所だよ。』
ラルシルの言葉を聞いて驚いた。
カースの街しか知らなかったシレンからすると、ラルファンドは夢のような街だったのにそれ以上の街があるとは想像できなかった。
『ラルファンドなんてレジスタンスの街の中で小さい方だよ。』
あれほどの街が小さいなんて想像しておらず、いかに世界を知らないかを思い知らされた感じだった。
ラルシルが
『カースの街の生活ってどんな感じなんだ?』
『食べて寝る、ただそれだけの生活だよ。でも、カースは食べなくても寝なくても永遠に生きていける。本能なんだろね。俺にはカースのような生活は耐えられなかった。』
『仕事はないのか?』
『仕事、と呼べるかわからないけどあることはある。』
ラルシルはカースの街について色々と聞いてきた。
会話を続けていると、舗装された大きな道路が現れた。
その先にはラルファンドの建物とは比べ物にならないほど大きく綺麗な建物が見えてきた。
『ここが目的地のシーサだ。』
しかし、違和感があった。
働いている人間に生気を感じられない。
まるでカースのようだった。
『ここはレジスタンスの街のじゃないのか?』
ラルシルに聞いた。
『ここにはカースもレジスタンスもいる。レジスタンスがカースを管理して仕事をさせているんだ。』
管理、とはとても思えなかった。
まるで奴隷のように扱っていた。
二人は図書館に向かった。
図書館で働く人間のほとんどがカースのようだった。
図書館だから静かなのは当然だが、空気が重い。
利用する客はあまり気にしていないようだが、シレンには違和感でしかなかった。
しかし、今は本を探すことを優先しよう。
そう考えた二人は目的の本を探した。
序章は見つかるものの残り2冊が見つからない。
端末で検索してみることにした。
見つかった。
しかし奇妙であった。
なぜか残りの2冊は閲覧禁止となっているのだ。
なぜ童話のような本が閲覧禁止となっているのだろうか。
二人が小声ではしていると、とある男から声をかけられた。
『エルフの贈り物を探しているのか?』
シレンは答えた。
『はい、序章は読んだのですが続きが読みたくて。』
男は少し怪訝な顔をして答えた。
『それは、あまり言わない方がいい。ここで会話していると目立つからうちに来てくれ。』
男に連れられとある部屋に入った。
『適当に座ってくれ。』
豪華ではないが、綺麗な部屋だった。
『なぜ、あの本を探しているんだ。』
男に尋ねられ、シレンは答えた。
『続きが気になって、読みたいだけです。』
男はため息をついた。
『それだけではないだろう。君はあの本が何か知っているんじゃないか。』
『童話ですよね。』
男は少し間を置いて、
『ただの童話が、閲覧禁止になるか?』
確かにそうだと思った。
『君が探している理由がなんなのかわからないが、あの本は童話ではない。言うなれば、この世界の歴史書だ。』
はっとしたが、確信に変わった。
やはり、この世界の呪いを解く鍵が書かれているのだと。
ラルシルはずっと黙り込んでいた。
男はシレンの目を見て再度問うてきた。
『なぜあの本を探している。もし、俺以外の人間に見つかっていたらお前たちは捕まっていた。』
シレンは男を信用して話をしようと決意した。
『この世界の呪いを解き、カースもレジスタンスもない世界を取り戻したいんです。』
男は笑いだした。
『こいつは飛んだ重罪を犯そうとしているな。本当に俺で良かったよ。そんなことをやろうとしてると知られたら死罪だ。』
ラルシルはあっけに取られた顔をしていた。
シレンを目を見開いていた。
『呪いを解く、そう願う人間が他にいたとはね。』
シレンは男に聞いた。
『俺以外にも、呪いについて考えてる人がいるんですか。』
男は答えた。
『昔はたくさんいた。今はそう多くないだろう。』
シレンは男に聞いた。
『なぜ、今は、』
ラルシルが急に話し出した。
『呪いについて話すことは罪で捕まる。呪いを解くなんてカースを使い倒してる人間からするとあり得ない話だ。逆らわずなんでもいうことを聞く道具を手放すわけがない。』
男が答えた。
『今、呪いを解こうとする行為は死罪になる。それに怯え呪いに立ち向かうことをする人間は減った。』
男は続けてこう言った。
『本気で呪いを解きたいのなら、君に託す。ただし、自分たちがやろうとしていることを口外するなよ。この本も見つからないようにしろよ。』
そういうと、男はシレンに2冊の本をわたした。
それは、探していた本だった。
生きることを拒絶された世界 凪十(なぎてん) @nagi_ten
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