第3話 探索
シレンは図書館に向かった。
道中の建物の高さに驚いた。
街の外からでも見えてはいたが、今までいた街には平屋しかなくみ上げるような建物はなかった。
唯一見上げるものといえば、手入れのされていない巨木だけであった。
驚きながら、街の中を歩いていると古いが威厳のある建物が見えた。
周りの建物と比べると高さは無いが、とても大きい建物だ。
建物には“博物図書館”と書かれていた。
建物に入ろうとしたところ、声をかけられた。
『IDの提示をお願いします。』
『すみません、IDとはなんですか。』
『IDの提示をお願いします。』
再度言われたが、よく見ると見た目は人間のようだが人間ではなかった。
困っていると、後ろから声がした。
『その人は、僕の同伴です。』
振り返るとそこには、最初に声をかけてきたラルシルがいた。
ラルシルは人なざらる何かが持っている装置に手を当てた。
『照合が完了しました。ラルシル様お入りください。』
ラルシルが言った。
『シレン行くぞ。』
なぜ先ほどつけてもらった名をラルシルが知っているのかと疑問に思っていると
『長老に言われてきたんだ、ここにはお前一人では入れないから行ってやれって。そんな入口で突っ立てないで中に入ろうぜ。』
シレンはラルシルに聞いた。
『さっきは手を当てて何をしていたんですか。』
『敬語じゃなくていいよ。さっきのはID照合、個人を特定するためのチップが手に埋め込まれているんだ。お前も登録するといい。』
何を言っているかわからなかったが、とりあえず中に入れたことに安心した。
外から見た建物もすごかったが、中はもっと凄がった。
本でしか見たことのない、標本や化石、価値はわからないがたくさんの絵が飾られていた。
『本は二階だよ。ついてきて。』
そう言われてラルシルの跡をついていくと、たくさんの本が並んだ空間が現れた。
『探したい本があるならこの端末で検索するといい。』
操作がわからないでいると、ラルシルが操作してくれた。
『なんて言う本を探してるんだ。』
『エルフの贈り物』
『それなら、検索しなくてもわかる。こっちだ。』
ラルシルについていくと、探していた本が見つかった。
手に取ると表紙にはこう書いてあった。
"エルフの贈り物-序章-"
ラルシルに聞いてみた。
『このほんにはつづきがあるの?』
『そんなことも知らないでその本を探してたのか、この本は全部で3冊ある。この街の人間はみんなこの本を読んで育ってるんだ。』
しかし、残りの2冊は見当たらなかった。
『他の2冊は誰かが借りて行ったのかもな。』
『この本借りられるか?』
『ちょっと待ってろ。』
そういうと、ラルシルは先ほどの装置を操作し出した。
『これでヨシと。借りたぞ、持っていくといい。』
本を借りて博物図書館を後にした。
『シレン、これからどうするんだ。』
『本を探すことだけしか考えてなかった。これから宿でも探すよ。』
そう答えると、
『宿ならいいところを紹介するよ。』
案内された宿に入り、借りてきた本に目を通した。
要約すると
ある森の中に自給自足で生活する男がいた。
いつものように、川に水を汲みに出かけると一人の女が怪我をして倒れていた。その女は人間ではなかったが、男は一生懸命に看病をした。数日の間、看病を続けていると、女は意識を取り戻した。
二人はしばらくの間、一緒に生活をしていた。
傷が癒えると女は、男にお礼をしたいの何か願いはないかと言い出した。
男は特に欲しいものはなく、お礼を断った。
しかし、女はどうしてもお礼がしたいと言って聞かなかった。
男は冗談半分で、不老不死になりたいと言った。
女はその願いならば叶えられるといい、魔法をかけた。
男は半信半疑だったが、周りの人間が老いて死んでいくのに自分は老いもせず生き続けることができていた。
森の中での生活も長くなり、様々な動物と触れ合い、死んでいく様子を何度も見ていた。
初めのうちは、そんな生活を楽しんでいたがいつしか心を病んで行った。
と言う内容だった。
記憶の中での内容と同じだった。
翌日、シレンはラルシルを訪ねた。
『昨日はありがとう、一つ聞きたいことがある。』
『なんだ?』
『あの本の続きを知っているなら教えて欲しい』
『ごめん、読んだことがあるのはあれだけなんだ。続きがあるのは知っているが、内容はわからないな。』
返却されるのを待つしかないと思い、数日返却されるのを待ったがなかなか返却されなかった。
ラルシルが本の管理者に確認したところ、貸出記録もなく誰が持ち出したのか不明とのことだった。
『なんであんな本が気になるんだ?』
呪いの解除方法を探しているとは言えなかった。
『子供の頃に読んだが、内容をうろ覚えだったからもう一度読みなくてな。』
それ以上は聞いてこなかった。
『そんなに続きが読みたいならもっといい街があるけど、いってみるか?そこならあると思うぞ。』
『ぜひ、お願いしたい。』
即答した。
二人は本を探しに隣の街に行くことにした。
『ビークルで3時間くらいだけど、かなり揺れるから覚悟しておけよ。どうせ、乗るの初めてだろ。』
二人はラルファンドを後にした。
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