そんな時はこんな言葉

夢月七海

4/21 医者たちがグーグルを集団訴訟したニュースに寄せて


 私は仕事で、病院のことをグーグル検索することがたまにある。それは、資料に載っている住所が正しいかどうかの確認なのだが、その時に、グーグルのマップを見ると、どうしても口コミが目に入ってしまう。

 その内容が中々に酷い。医者や看護師に対しての誹謗中傷に、心が痛くなる。それを知っていたため、医者のグーグル集団訴訟のニュースを見ても、あまり驚きはなく、そりゃ対策したいよね、という気持ちだった。


 そんな時、思い出す言葉があった。

 それは発せられたのは、二〇〇九年あたり、当時のお笑いブームを築いたショートネタ番組『爆笑レッドカーペット』の放送中だった。


 『爆笑レッドカーペット』で、アンガールズが登場、一分間のネタをした。そのネタとは、あるコンビニ店員二人が、自分たちのコンビニの評価をネットで見ることを知り、早速検索してみるという内容だった。

 すると、その評価は散々。しかも、口コミを見てみると、「店員がキモイ」と、自分たちのことを書かれていた。ショックを受ける山根さんに対して、田中さんは一歩前に出て、訴える。


「僕たちも、生きているんです!」


 当時は、まだガラケーだったが、ネットを見ることは気軽に出来ていた。ネタ内に出てくるのがグーグルマップのことかは不明だが、口コミ評価も浸透していたのだろう。そんな中で、一般人が一般人を評価する、という事態が始まっていたのだと、田中さんは気付いていた。

 もちろん、ネタの中でのこの一言は、田中さんの必死の形相も併せて、笑いをとっていた。ただ、この一言を「お笑い」だけに留めてはいけないと、十五年経った今は思う。


 田中さんが「キモカワ芸人」から脱却し、お笑いや人に対する分析力を買われてテレビに出ている現代だからこそ、その先見性に舌を巻く。逆を言ってしまえば、田中さんが危惧していた時代に、そして取り返しのつかない事態になってしまったのだと思い、少し悲しくなる。

 他人の「ガワ」だけを見て、評価をするのは簡単だろう。その中に、被害妄想が混じっていても、きっと気づけない。だが、それを言葉にする前に、「僕たちも、生きているんです!」という田中さんの訴えが、思い留まるきっかけになってほしい。




















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そんな時はこんな言葉 夢月七海 @yumetuki-773

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