第4話【三変化の剣】
「俺たち彗は今色んな惑星と関係を結んでいてなぁ。まぁそいつらのブースが一個一個あって、そっからまた枝分かれしてさっき言ったみたいな、いろいろのものが保管されてるんよ。さっきシリウスが言ってた才器の型っていうのも、簡単に言えば武器のこと。さっき言った通りチキューのブースはないから、そこの代表的な武器と似たようなものなら探せるわ」
入口の方向に戻りながらアルタイルは話した。地球の代表的な武器と言われ、ヘリオスは腕を組みながら考えた。
――代表的な武器か。真っ先に思いつくのは刀だけどそれは日本に限ったものだからなぁ。銃か? でも銃ぐらいどこにでもありそうだよなぁ。じゃあよくファンタジー作品に出てくる両刃剣になるのかなぁ
「多分両刃剣かな。よく物語とかに出てきますし」
その言葉に対しアルタイルは三つの目を丸くしていた。もしかして知らなかったのか?、と困惑しているヘリオスはすこし誇らしげな感情が湧きつつあった。しかしその源泉はすぐにせき止めらることとなる。
「お前の星にもあるんだなぁ」
腕を組みながら返したその言葉に、逆にヘリオスが面食らうこととなった。
「いや、それが代表ってんならいいんだけどさ。他のやつと被ってないから。じゃあとりあえずついてきてくれ」
ヘリオスは、作品での宇宙の文明で言ったらロボットや光線といったいかにもSFといったものや、原始的なものをイメージしていた。井の中の蛙とはまさにこのことだ。
「もしかして槍とか弓もあったり」
「あー、あるぞ」
アルタイルは立ち止まり答えた。案の定だった。
「ちなみに俺の才器はこの“
アルタイルは右の前腕から銀色に輝く弓を引っ張り出した。その弦の付け根辺りに一つづつ突起が着いている。これで殴っても痛そうだ。
曲がるのか?というレベルで太い"リム"と呼ばれる、弓の反っている部分にはその形と同じ様な穴が空いている。だが、貫通はしておらず、中心に何かしらの板が入っているようだ。
それはさておき、彼は弓の相棒である肝心の矢を持っていなかったのだ。
「矢は無いんですか?」
「この残光に矢は必要ない。こうやって引き絞るだけでいい。あ、ちょっと離れててくれ。危ないから」
アルタイルは弓を構えて、袖の針金を目線高さに合わせ、引いた。するとアルタイルの周りに八つの光の玉が現れた。アルタイルが弓を引き絞るにつれ、その玉が回転しだした。徐々にその玉は形を変え、最終的には矢へとなっていた。
アルタイルが弦を離すと、矢は緩やかに弧を描きながら一メートルほど先で集まり、そのまま一直線に遠くに見える壁に吸い込まれていった。
「いいだろ?これ。俺の『
能力と相性がいいことがあるのか、と思ったヘリオスは自分の才器が楽しみになった。
「やべ、話しすぎたな。全く進んでねぇや。説明しやすいから俺の惑星のところでいいか。早くしねぇとシリウスに怒られちまう。あいつ結構怒ったら怖いからよ」
アルタイルは速足で進んだ。ヘリオスはそれを追いかけながらふと、横に目をやった。様々な扉には星の名前と思しき物が沢山ある。しかし、一つだけ異様な扉があった。
それは封鎖されており、恐らく‘’オクシデルキス”と書かれたプレートが横に備え付けられている。
禍々しい雰囲気を醸し出す扉であることから曰く付きなのだろうと思い、ヘリオスは何も聞かずアルタイルを追いかけることにした。
「着いたぞ。ここが俺の生まれた星であるトリアのブースだ。さぁ入れ。遠慮はいらない」
アルタイルは扉が上へスライドした暗い部屋へとヘリオスを押した。精一杯押しているのであろうが、あまり進まなかった。入った瞬間ほのかな明かりが点灯する。ヘリオスはその光景に目を丸くした。
「壁?」
ヘリオスの眼前には、装飾も何もない壁が一枚と、下に怪しげな円盤が一つおかれているだけだった。
「あの、これって――」
「詳しいことはいい、さぁ乗った乗った」
アルタイルにより、力一杯に突き飛ばされたヘリオスは謎の円盤の上に足を乗せた。すると、瞬きでもしたかのような、違和感を覚えないほどに一瞬にして景色が変わった。
その光景は倉庫というにはあまりにも綺麗すぎた。例えるならば古代の遺物を展示している博物館のような内装である。
剣や槍などの武器がガラスで閉じられた空間に立てかけられ、花畑のごとき多様な色の背表紙がこちらを圧迫するように見つめていた。
他にも正方形の棚の一部屋一部屋に、一つづつ丁寧に置かれた電子機器のようなものや、目がカネの文字になってしまうほど美しい金の延べ棒や宝石たちが陳列されてもいた。
「俺も初めて来たときは驚いたよ。だって倉庫って言うもんだからテキトーに物が置かれてるかと思ったら、綺麗どころか博物館みたいになってんだぜ?」
アルタイルは腕を広げながらスタスタと、武器のショーケースの前に歩いてゆき、剣の手前でカードキーを出した。
「これは倉庫番である俺特権らしいが、こうやってすると中の武器と同じ奴が手に入る」
瞬く間に中に入っていたものと同様のものがアルタイルの手元に現れた。その剣は全長一メートルほどで柄と刃の比率が一対六ほどの一般的な剣であった。
「これでいいか?それかデカいのもあるけど」
ヘリオスは大きな武器を振り回すことにロマンを感じていた。そのためゲームでよくクレイモアや太刀なんかをよく使っていた。しかし日常でそんな武器を持つ機会はめったにない。しかし遂にその時がやってきた。
「デカいのがいいです」
「いい趣味してんじゃねぇか」
今までにないほどにはっきりとした声でキッパリと言う。それを聞きアルタイルは嬉しそう指を鳴らしていた。
「実は俺んとこの代表武器は弓じゃねぇ。どうしても俺には扱いきれなかったから弓にしたんだが、本当はこれだ」
おもむろに現れたそれはアルタイルの身長をはるかに超える得物であった。全長はおよそ二メートルほどの両刃の大剣であった。
刃の横幅は五十センチ弱、真ん中に一本の線が柄にかけて入っいた。刃には等間隔に二つの線が入っており、それぞれの少し上には丸いものがついていた。
「これはソーサイスという武器だ俺の国しかない、まさに代表的な武器だな。俺の出身地はカラクリが好きでな、こうやるとすごいぞ」
と言って、アルタイルはソーサイスの切っ先を天井にぶつけた。するとソーサイスは真っ二つに分かれ日本の刀のようになった。
「これが第二段階。そしてこうするとっ」
アルタイルはよろけつつも、二つの刀を上下に振った。するとSの字のように折れ曲がり、鎌のような形状になった。
「これが第三段階。どうだ巨大武器であり変形武器だ。ロマンの塊だよ」
ヘリオスは深く感動した。巨大武器を間近で見れるどころか、それが変形するなんて! まさに人生で求めていたものであった。しかしヘリオスはある不安が湧いた。
「でもいいんですか? 俺の星のものでもないのに」
アルタイルはソーサイスを床に置いて、頑張って組み立てながら答えた。
「あぁ別にいいぞ。その国のものっていう制限はない。自分のものを使ったほうが、えーっとあれだ、なんか安心するだろ」
おそらくアルタイルは母星にプライドを持っている場合に配慮しての行いだったのだろう。どうやらそれをうまく口に出せないそうだ。
「ま、これがいいってんなら、お前に渡そう。製造担当のレグルスんところに持っていけ。倉庫を出てすぐだ」
「ありがとうございます!」
大剣を担ぎながらトリアのブースから廊下に出た。そこでちょうどよく迎えに来たシリウスと鉢合わせた。
「お、ヘリオス。ちょうどいいとこに……って、なにこれ」
シリウスはドン引きしていた。
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