どどどどどどどんでん返し

村田鉄則

どどどどどどどんでん返し

 包丁を持ち、は彼女を殺害した。

 憎い彼女を。

 私は殺した。

 私を裏切った彼女を。

 

 証拠をもみ消すために、誰も寄り付かない家の近くにある墓地に件の被害者と彼女の遺体を一緒に埋めた。


 …彼女


 …私の


 …私のペットである、メスのチワワのハルちゃん


 彼女は、今日、突然前触れもなく豹変し、殺戮チワワになって、私の近所に住む一般人1人を殺した。私は市民だった。だのに、彼女の犯行で今日変わってしまった。 

 そこは、私が今まで、裏金をもらってた政治家やら、不倫をしていた教師など悪いことをした奴を埋めるのにいつも使ってきた場所だ。私は、善良な市民だから、そういった悪を滅するのだ。

 そういや、私って誰?と読者は思っていることであろうが、読者であるあなたこそが私だ。小説と言うものは今この文のように1人称視点で書かれているものが多い。しかし、少し立ち止まって考えて欲しい。冷静に考えると1人称視点の小説って誰に話しかけているのだ?古典、例えば『人間失格』の場合、手記という体、『こころ』の場合、遺書という形で一人称視点は誰かに語りかけるものとして描かれており、違和感が無いように書かれている。しかし、今この文章は誰に語り掛けているのだ?自分の犯行内容を吐露したものだぞ。何で語る必要がある。

 本題を忘れていた。は読者である、という体にしよう。読者が犯人というのは昔からときたまミステリで取り上げられてきた題材だ。

 あなたは殺戮チワワの飼い主だ。いやチワワ飼ってないよ、というツッコミは無しにしよう。あなたが犯人だ。これは絶対。




「以上の文章が今回、私の作ったAIが自力で書きあげたミステリー小説です」

 マイクが拾った教授の声がスピーカーから発せられ、講義室に響いた。

「何か質問は?」

 教授はいつもながらの仏頂面で、感情のこもってない声でそう生徒たちに聞いた。

 僕は手を大きくあげた。言いたいことがあったのだ。

「殺戮チワワってなんですか?」

 講義室に、ざわめきが灯った。

 皆が気になってはいたが、単位のために敢えて聞かなかった質問だったのだろう。

「私には、わかりません。私の作ったAIが考えたことですから」

 教授はボソッとそう言った。


 その時、講義の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 教授は、電源が切れたように教卓の前で俯いた。

 

 これはスタンバイモードだ。

 僕の通っている大学の教授は皆ロボットである。様々な専門的知識をハードディスク内に蓄積されたロボットは、たまに先程のようにポンコツなところを露見することはあるが、我々より遥かに知能が優れていて、学ぶことが多い。

 

 昼食の時間になったので、僕は学食に行った。

 うちの大学は、学食の従業員も皆ロボットだ。お母さんやお父さんの料理より美味い料理を30秒で提供してくれる。

 ロボット万歳だ。

 

 学食でロボットから料理を受け取ると、あまりの美味しい匂いに、僕は思わず触手を伸ばした。

 

 ああ、最高だ。

 僕がこの学食で一番好きな料理。

 

 石の唐揚げ。

 カリカリしててうまいんだよな。

 触手を動かして、口の中に石の唐揚げをポイっと放り込む。

 僕のイソギンチャク状の無数の歯が石の唐揚げを丸め込んだ。

 ああ、美味しい。


 


 作者である俺は、この小説を書いていく途中で、訳が分からなくなってきた。

 『どどどどどどどんでん返し』という変なタイトルを付けたはいいものの、そこまでプロットを練っていなかった。そのため、わけのわからぬ作品になった。ってか、本当に、何をしたいんだこの小説は。どんでん返しと言いつつやっていることは叙述トリックに辿り着いてすら言えないものばかりだ。

 いや本当、これはなんなんだ。殺戮チワワってなんだよ。石の唐揚げとは???ロボット教授???トンチキにも程が


 

 

 私は、上記のようなあとがきを交えた、メタミステリを書こうとしたが頓挫した。書いていく内に自分でも何を書いているのかわけがわからない…そう感じ始めたのだ。私は現在、某大学の文学部に通う女子大生だ。メタミステリが大好きで、辻真先や麻耶雄嵩を何作か読んでいる。いや、私の説明はどうでもいいか。私はとにかく変わったメタミステリを書こうとした。藤子・F・不二雄の「幸運児」という短編のように入れ子構造になっているメタミステリだ。少し世間で言うメタミステリと毛色が違うが、私がメタミステリと言うからメタミステリなのだ。しかし、メタミステリは難しい。もっと深く学ぶべきだったかもしれない。




 私が十数年前、女子大生のふりをして書いてネットにあげて身バレして削除した小説が今までの文章です。私は今89歳になりました。性別は男性。ネカマをやっていたわけです。恥ずかしい過去ですが、死ぬまでにもう一度公開しようと思い、今回カクヨムであげました。


 


 以上でわけのわからぬ小説は終わりを迎えます。

 あくまでフィクションです。

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どどどどどどどんでん返し 村田鉄則 @muratetsu

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