選択ルート⑥「終わるのが寂しいなんて」
花火大会当日になった。
自宅前には碧と翠がすでに集合しており、彼女たちは、そのまま会場へ向かった。
「花火を近くで見るなんて、久しぶりだな。」
会場へ向かう道のりは、たくさんの人で混雑していた。道路は歩行者天国となっており、あちこちに誘導係が立っていた。
「あまりはしゃぎすぎて、迷子になるなよ。」
碧はそういうと、彼女と歩調を合わせた。普段は少し早歩きの彼だったが、これだけの人の波に彼女が飲まれないように、周りの人から守るように歩いていた。
そんな何気ない気遣いが心地よくて、彼女は嬉しくなった。「何にやついてんの?」と碧に言われて、赤面してた自分の顔を見せないよう、下を向いた。
その2人の後ろを翠が歩いていた。
***
会場はすでに観客でいっぱいだった。座って見られるエリアはどこも満席であり、3人は立ち見席の方へ向かった。
向かう途中に屋台を発見し、3人は唐揚げ棒を購入した。
辿り着いた立ち見席もそれなりに混んでいたが、3人が立って花火を見るだけのスペースは確保できた。
「始まるぞ。」
花火が始まった。最近流行りの音楽に合わせて、様々な花火が夜空に輝く。
王道の大きな花火、下から湧き出てくる花火や変わり種まで様々だった。どの花火も素敵で、迫力があった。
いよいよクライマックスだ。一斉に花火が上がり、夜空一面が光のカーテンのようだった。周りの観客は、何度も写真を撮っていた。
碧が珍しくスマホで撮影する横で、彼女と翠はただじっと花火を見上げた。この時間を忘れないように、目の奥に焼けつけておきたかった。
2人の手の甲が触れた。大きな音から守ってくれたあの手は、もう自分よりも遥かに大きく、角張っていた。いつかこの手は、彼女以外を守る日が来るのだろうか。そう思うと、なんだか複雑だった。
「あのさ…」
翠のその声は、花火の後にかき消された。なんと言ったのか聞き返したが、彼は「何でもない」と前を向いた。
***
花火大会は無事終了した。多くの人が同じ出口を目指して、歩き出した。
彼女は人混みに紛れて、離れ離れになってしまった。2人に連絡しようにも、立ち止まるスペースはなく、どんどん前に押し出された。
やっとの思いで、少し開けた場所に出ることができた。そこは…
【選択肢】
A「川沿いの通り」
→エンディング①(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075929008459)に進む
B「駅の反対側」
→エンディング④(https://kakuyomu.jp/works/16818093075927510526/episodes/16818093075929097727)に進む
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