ディストピア喧嘩師録

釣ール

自分を楽な箱に閉じ込めないために

 正社員の給料は少ないことを何度も友達と割高なペットボトルを手に語り合う。


 楽しめればなんとやら。

 高校生か大学生感覚で過ごしている方が安くすむのだから。


 泰良たいらはいつものように喧嘩で勝ったことを友達に話そうとしたがもうお互い十九歳だ。

 そんな物騒なことは合法的な競技での結果出ない限りただ野蛮と言われるだけ。


 泰良も友達もすっかり変わった。

 倫理感というやつの意識なのか、やりたい放題出来なかった十代の抑圧よくあつなのかは分からないが、少なくとももう誰も殴らなくていい世界が訪れることを祈るために手でおがむように形をつくるだけ。


 無力だ。

 何のために生きて、何のために戦っているのか。

 本島は泰良も喧嘩はしたくなかったが絡まれやすいから仕方がない。

 そして自分達を守るための技術だ。


 世界は誰かに優しく出来てはいない。

 その中で信じられない出来事は嫌な形かいくらか良さそうなエピソードになるかどうか。


 泰良達はペットボトルで酔えるディストピアをかつてのように楽しもうとはもう思わない。


「これからどうなるんだろう俺たち。」


 返答に最初は困った。

 だが泰良は右手を拳に、左手を掌にあわせ笑ってみせる。


「歴史の繰り返しを変えられるチャンスと思って、少しずつ人生歩いていこうぜ。」


 上手いことを言うつもりはない。

 テレビ局じゃあるまいし。


 泰良は友達と肩を抱いてまたチェーン店へ向かうことにした。

 いつも結末は早急に出せない。

 先送りになるべくしないよう、誰にものまれないように生きることを二人は誓いあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ディストピア喧嘩師録 釣ール @pixixy1O

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ