第4話:もう兄妹じゃないし・・・。

これは経験した僕自身気づいてないことなんだけど、僕は一度死んだことが

あったみたいだ。

その僕を救ったのが檸檬だったらしい。

僕自身は災難にあった当事者だから、なにがどうなったのか記憶にもない。

ぼくが知らないうちに事が起こって、なにもなく終わったようだ。


その顛末を檸檬から聞かされた。


「あのさ良雄、良雄はなにも覚えてないかもしれないけど」

「良雄は一度死んでたんだよ」


「死んでた?・・・まったく記憶にないけど」


「私ね、時間を自由に操ることができちゃうの?」


また SFみたいなことを言い始める檸檬。

まあ、人間じゃないとは思ってたけど、時間を操るってまさかそんなことが

できるとは?

にわかには信じがたい。


でもそれが本当かどうか、実際体験した僕がなにも覚えていないんだから

照明のしようがない。

檸檬がそう言ってるんだから、そうなのかもしれない。


なんでも僕が下校時、交通事故に遭遇してほぼ即死状態だったんだそうだ。

すぐに僕の家に警察から連絡があって僕が亡くなったことが知らされた。

そこで檸檬ちゃんは、僕が事故に遭遇する前まで時間を戻して僕が事故に

見舞われないようにしてくれたらしい。


もし、それが本当でそんなことできるとしたら、もう檸檬は異星人としか

考えられないだろ?

檸檬は正体不昧のミステリアス・ガール。


で、檸檬が言ってたように、休みの日彼女は髪をショートにして帰って来た。

僕は長いほうが好きなんだけど・・・ショートも似合うじゃん。

頭の形がいいから、横から見ると可愛いし・・・。


「どう?似合ってる良雄」


「まあな」


「気の無い返事」


「せっかく良雄のために、いい女になって帰って来てやったのに」


「カットしろなんて言ってないだろ」


檸檬はどうやら僕の気を引きたかったみたいだ。


「・・・はいはい、綺麗だし、可愛いよ」


「なにそれ!!・・・もういい、バカ良雄」


もうちょっと性格が穏やかならな・・・兄妹卒業してやってもいいんだけど。


で、檸檬にとって決定的な日が訪れることになった。

ある夜のこと。

窓の外がやたら明るいから、なんだろうと思って表に出た。

そしたら僕の家の上の上空に眩しい光の塊が止まっていた。


「え?・・・まさかのUFO?・・・まじで」

「いるんだUFOなんて・・・」

「地球を侵略しに来たのか?」


ありえない出来事に家族全員唖然とその光る物体をただただ見ていた。

そしたらその光る物体から一線の光が地上に差し込んで、その光を伝って

ふたりの人物が光る物体から降りてきた。


地上に降りてきた人物らしき人物は、ふたりとも髪が赤かったんだ。

檸檬と同じだ。

降りてきた人物はまぎれもなく異星人。


で、その異星人が言うには・・・この星に捨てた子供を探しにやって来たって。

それって檸檬のことだってすぐに分かった。


今更、檸檬を探しに来たのか?

なんでもブラックホールをジャンプしながら17年あまりかけて、この地球に

やって来たんだって。

一度は捨てた赤っちゃんだったけど、やっぱり忘れられなくて地球に戻って

来たらしい。


で、異星人夫婦は、僕んちですくすく育って、いい女になってる檸檬を見て

涙を流した。

ぜひ、自分たちの星に連れて帰りたいと・・・。

だけど、檸檬はイヤだって言った。


「私の両親は「瀬戸田 良伴せとだ よしとも 」と「瀬戸田 美子せとだ よしこ」」だけだよ」

「それにもう私には彼氏がいるから、ここに残る」


彼氏って?・・・彼氏ってまさかの僕?

そんな勝手に・・・檸檬はいつのまに僕の彼女になったんだよ。


絶対、あんたらの星には行かないからって檸檬がかたくなに言うもんだから

異星人夫婦も諦めるしかなかったようで、僕たち家族に檸檬をよろしく

お願いしますって言って、僕んち家の屋根の上から遠い宇宙へ帰って行った。


これで檸檬の正体が分かったようで、やっぱり分からない。

まあ、分かったからって何かが変わるかと言ったらなにも変わらないんだけど。


「檸檬・・・良雄を起こしてきてくれる?」


「ほ〜い」


毎朝、いつものようにお母さんに促されて檸檬は僕を起こしに部屋にやって来る。


「お〜い、良雄・・・起きろ〜」

「・・・・・・・・」

「起きろってば・・・私に手間取らせないでくれる?」


それでも起きないでいると、いつものように僕は檸檬からキス攻めに会う。

顔じゅう、ツバだらけにされる。


「やめろ〜!!兄ちゃんの顔に妹がキスって、それっておかしいだろ?」


「もう兄妹じゃないし・・・私たち恋人同士だもん」

「まだエッチしてないだけで・・・」


おしまい。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あ、mysterious girl。 猫野 尻尾 @amanotenshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ