曇の終わりと晴れの始まり (下)
鈍色に囲まれた校舎。少し鯖が目立ってきた赤色の屋根が特徴的な体育館。それを繋ぐ血管のような場所に私はいた。彼を待つ為である。
「先輩!次の大会も頑張ってください!」
「ありがとう」
2.3人の取り巻きを連れた男が体育館からこちら側へ向かってきた。アイツで間違いない。女の子からの人気は高いようで常に周りに女の子がついて回ってるようだ。見た目はスポーツをするには適していないアイドルを意識したような髪型に切れ目。ただバスケの実力は本物のようで県内でもそこそこ強いと言われるウチのバスケ部で1年生の時からエースとして活躍している。3年生になった現在は主将としてチームを引っ張っている。らしい。
校舎を歩いていた凛に話しかけて強引に連絡先を交換させた挙句。告白が玉砕した後はよほど自分のプライドが傷ついたのか1日に何十件も連絡を寄越して交際を迫っている。最近は内容が脅迫めいてきていて私の彼女は身の危険を感じていると言っていた。
私の彼女がそんな思いをしているのに彼女である私が黙っていられるはずがない。
私はアイツが1人になるのを後をつけながら待った。ずっと女の子が付き纏っていて諦めかけた時もあったが私はひたすら待った。
結局アイツが1人になったのは更衣室に入った時だった。私はこの機を逃すまいと更衣室のドアを叩いた。
「タカアキ先輩、、いますか?」
「タカアキは俺だけど、誰?」
お互いの表情も知らぬまま私たちはドア越しに会話を始めた。
「私、先輩に話したい事があってきたんです」
私はすぐに本題に入りたかった。回りくどい言い回しをしても無駄と思っていたから。
「、、何?」
アイツは少し警戒してるようにも思えた。たしかに更衣室で自分が着替えている時に話しかけられたら誰だって警戒するかもしれない。
私は少し間を置いて返事をしたアイツに畳み掛ける。
「青木凛 知ってますよね?彼女に付き纏うのやめて欲しいんですけど」
長い時間、アイツは沈黙した。何を考えているのか。何を企んでいるのか。私の中に恐怖心が全くないと言ったら嘘になる。だけど負けるわけにはいかない。私は親に負け、今回アイツにも負けたら私の存在価値がないように思えていた。だから私は逃げないし何が起こっても戦う。
「知り合いなのかな? とりあえずさあまり人に聞かれたくないし、更衣室に今は俺しかいないし入ってきなよ」
アイツの返事は罠だと思った。今更衣室には誰もいないから入ってこいは何をしても証人がいないから大丈夫という意味にしか考えられなかった。私はそう頭で考えた上で
「、、わかりました」
そう返事をして、更衣室のドアノブを回していた。
曇の終わりと晴れの始まり @hikawa_soyo
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