第6話 まさか……土佐?
「す。すげぇ、FクラスがあっさりとAクラスを!」
歓声の中を俺はトボトボと歩く。
能力におぼれただけの小物を倒してどうなる。
ひねくれたように俺は会釈をする。
「た、たまたまですよ」
俺は愛想笑いでごまかした。
ほんとうに怖いのは才能もあって、努力をしている化け物だ。
能力で溺れた人間なんて。
やはり、この剣はグロモボーイの折れた刀を手にとる。
不自然な反り、塗ったような刃紋、地金もよくわからない。ついにはシノギすらない……
やっぱり、テキトウな知識でつくった刀か、これは日本刀じゃなくて中国製のニセモノみたいだ。
「その日本刀はどうだ?」
「がっかり……です」
俺は折れた刀を、手にとる。
「日本刀なんて、そんなもの。雑な剣身ばかりだ」
そんなわけはない。折れず曲がらずよく切れる。
日本刀をたたえる歌だ。
中国の唐の時代にも讃えられた日本刀。
ほんとうに侮辱だ。
てきとうな知識のない人間が勝手に作られたものに怒りがわく。
「こんなんじゃない……こんなんじゃ…こんなんじゃないもん……うわぁぁぁぁあぁぁーーーん」
俺はガチに涙がこぼれてくる。
なんで誇るべき勝者が地面にふして泣きだすのか。
ざわめく周囲をよそに俺はなく。
「ユリィー。何泣いているんだ。勝ったんだから、ほらシャキッとしろ!」
アレクセイが俺の手をつかみ、体を起こそうとするが、俺は泣き叫んだまま。
刀はもっと崇高で、カッコよくて、美しくて…語彙がたりない!!
「やだぁぁぁ! こんなんの村正じゃないもん! 村正にあやまれ―――!!!」
俺の涙にただ、アレクセイはあきれけてている。
そんな困った人への軽蔑とか、いろいろなあきらめ、ここまで止めていると他人に成りすますこともむずかしい。
そんな打算もあるのにアレクセイは恥辱を閉じこめて俺を泣きやませようとする。
「ほら、新しい武器を買ってやるから」
「いやだーーー! 刀がいい」
「子供かよ」
「子供だもん!」
そんな俺をよそに、さきほどグロモボーイに飛ばされた女の子が俺の横にたつ。
お礼でもしてくれるのかとおもい、さすがに俺も涙をぬぐう。
その子は白い肌に金色のくせ毛と翠みどりの瞳、華奢な少女……尖った耳から亜人というのがわかる。
まるで、妖精のようで……おもわず涙が止まり、ドキドキして見とれてしまう。
そんな少女はゆっくりとしゃがみ込み刀の破片をひろう。
まるで、フェアリテールのような一場面。
そして、じっと眺めて、麗しいため息を一つ。
「こりゃあヒドイ。わしも泣きたくなるぜよ」
もれた言葉は………土佐弁だった……
なんで?
刀だ! 刀をくれぇ! それさえあれば斬れぬ物はない! 七月七日(なつきネコ) @natukineko
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