第4章
「ウイルスの活動が止まった……?感染者たちの意識が、正常に戻りつつある!」
ユウトの興奮した声が、俺の意識に響く。
「……そうか、良かった」
ミナの意識から切断された俺は、安堵の息をついた。
俺の決断が、世界を救ったのだ。
けれども……。
「ヒロト!大丈夫か!?どうして、こんなことを……!」
ユウトが駆け寄り、俺の肩を掴む。
「……ユウト、俺は……」
言葉を紡ぐことができない。
今の俺に残された感情は、ミナへの愛情だけだ。
自我も、友情も、すべてを捨てた。
ミナだけを愛し、永遠に彼女に仕えるために。
「そんな……ヒロト、君は……!」
ユウトの嘆きに、俺は小さく首を横に振る。
「いいんだ、ユウト。これが、俺の選んだ道だ」
「くそっ……!何てことだ……!」
ユウトは拳を握りしめ、俯く。
「……ユウト、世界は救われた。だが、ミナを一人にしてはいけない」
そう告げ、俺はミナのもとへ向かった。
真っ白な意識の世界に、ミナが佇んでいる。
「ヒロト……あなた、本当に……」
俺に気づいたミナが、涙を浮かべる。
「ああ、もう大丈夫だ。俺がずっと、君のそばにいる」
「私は、あなたを自由にしてあげたかった。なのに……」
「いいんだ。これが、俺の望みなんだ」
そう微笑み、ミナを抱きしめる。
ミナを愛することが、俺の全てだ。
もはや、俺には何の迷いもない。
***
「ねえ見て、ヒロト。外は雪が降っているわ」
「ああ、綺麗だな。真っ白な世界だ」
「ええ、この世界に二人きり。私たちだけの雪景色ね」
ミナに微笑みかけられ、俺も笑顔を返す。
ここが俺たちの理想郷。
歪んでいても、ミナを愛する気持ちは本物だ。
「ミナ、愛している」
「ヒロト……私もよ。あなたは、私だけのものよ」
キスを交わし、抱き合う。
この愛が永遠に続くことを、俺は疑わない。
たとえ狂気に満ちていても、俺たちなりの幸せがここにある。
***
「……ヒロト、君は……」
ユウトだけが、真実を知っている。
親友を失った悲しみを、胸に秘めながら。
「だが、君のおかげで世界は救われた。あとは俺に任せてくれ」
ユウトは力強く呟いた。
新しい世界を築くため、もう後戻りはできない。
人類の未来を、ユウトは見つめ続ける。
二人は、新たな一歩を刻んだ。
(完)
永遠の雪景色 島原大知 @SHIMAHARA_DAICHI
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