第2話元工場勤務と異世界
意識が浮上してくると同時に感じたのは暖かさだった。
昔河川敷で日向ぼっこをしていた時のような、そういう穏やかな日差しと、草原の優しい感触がある。
「あ・・れ、ここ・・・は・・」
目を開くと、澄み切った青空が広がっていた。
雲一つないとはまさにこの事だろう。
「・・・いい天気だな~」
なんともなしにそう呟いたが、現状に対する違和感がだんだんと湧き上がってくる。
とりあえず、立ち上がって周りを見渡してみる。
草原だ、見渡す限り広がっている。
遠くに森や丘みたいなものも見えるが、どうにも草原のど真ん中にいるらしい。
なぜ、僕はこんなとこにいるんだろうか。
「たしか、玄関のドアを開けて・・・開けてどうした?」
なにかすごく眩しかった記憶はあるが、それ以降どうなったか覚えていない。
「なんだかな・・・これ普通じゃないよな」
そうは思ったが、どうしようもないとも思った。
多分仕事には間に合わないだろう。
すぐには帰れそうにないし、帰りを待つ人もいないし。
「俺がいなくても仕事は回るみたいだし・・・な」
「あんたこんなとこまで来てまだ仕事の心配してるの?」
ビクッとした。
「だ、誰だ!?」
周囲を見渡すが、草原が広がっているだけだ。
顔を下に見やると、声の主らしき物があった。
腕輪だ。
大きさ的に多分腕輪だと思う、下を見渡すがそれか草ぐらいしかない。
「ちょっと!ぼぉーと見てないで拾いなさいよ!」
「うぇっ、は、はい・・・」
拾い上げた球にはおもった程の重量はなかった。
ガラス?なんだろう、見当もつかない。
『よしよし、これで繋がったわね』
「はっ!?」
今度は頭の中で声が響いた。
『あたしはね【リン】。この世界のか・・神様からの頼まれてあんたをサポートするために来たの』
リンと名乗る声の主は一方的に話を始める。
「ハッ!?へ?なんで頭の中から声がするんだ?」
一方の僕は度重なる異常事態についていけてない。
なんでよくわからない所に来て、なんで変な腕輪があって、その上頭の中から声がするんだ。
『あんたねぇ、上位世界の住人ならこのくらいの話受け入れたらどうなの?』
上位世界?なんの話をしてるんだ?
「ここは、ここは日本じゃないのか?」
とりあえずの疑問をぶつける。
『あーそこからなのね。』
リンは少し静かになる。
「あのー、リ、リンさん?」
『ごめんごめん、そうね、まずここはあなたのいたニホン?とは違う世界なの』
そこから始まったのは、なんとも妙な話だった。
リンの話を要約すると、僕は僕がいた世界から【送り出されて】ここにいるらしい。
それはなぜかというと、この世界の神様と僕のいた世界の神様の取引の結果のようだ。
僕のいた世界の住人は強い力を秘めているが、世界の法則によってそういった力を引き出せずに保持しているらしい。
それで、たまに別世界の神様からの要望で僕の世界の住人を他の世界に送り出している。
それでなんの得があるかというと。
『あんた達が持ってる力は他の世界だと強く育って、世界の力になるからなのよ!』
と、リンは言っている。
「そう?なんだ。」
なんとも本当に妙な話だ。
しかしそうなると、僕は・・・。
「僕は元の世界からも要らない人間として送り出されたって事か」
居酒屋での会話が思い出される。
こうなってくるとさらに悲しいと思いつつ空虚な気持ちになってくる。
そこでリンが言葉を返してきた。
『まあ、そうでもないんじゃない?選ばれたのには理由があると思うわよ』
「理由?」
『そうよ、まあそれはわからないけど、少なくともここに来て、私に会ったからにはきっと素敵な日々を送れるわよ』
なんとなくリンが微笑んだような気がした。
なんだか前向きになれそうな気がする。
「そっか、なら僕はどうしたらいいのか教えてくれないか?」
いろいろわからない事はあるが、まずは進んでみよう。
幸い、面白そうな相棒も出来そうだしな。
きっとその方が、楽しく生きていけそうな気がする。
『フフフ、やっと聞いてくれたわね』
リンは不敵に笑っているようだ。
『そう、まずはあんたの力について説明するわ!』
ロボマスターは異世界で夢想?する。 @etoruta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ロボマスターは異世界で夢想?する。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます