つらいも
全方不注意
つらいも
つらさが溜まるとつらいもが生えてくる。つらいもとは何か?一言で表せば芋だ。
生えてくる。どこから?たとえば腰が痛い人は腰から。膝が痛い人は膝から。歯が痛い人は口から。という具合に、ふつうはつらさが溜まって限界を迎えたところから生えるみたいだ。
つらいもは芋なので、質量があって、ただでさえ痛い腰にさらに重みが加わってとてもつらくなる。らしい。しかもつらさが溜まると生えるので、とてもつらいと大きいのが生えたりたくさん生えたりしてひどいことになる。厄介なやつだ。
ただ厄介かといえばそうでもなくて、つらいもを引っこ抜くとつらさもとれる。だからみんな元気にやっていけてる――というわけでもなく、つらさだけは感じなくなるけど心身の異常は治ってないので、なかなかの医者泣かせなのである。やっぱり厄介だ。
心身の異常と言ったが、体のつらさだけでなく心のつらさが溜まってもつらいもは生えてくる。
心が原因の場合、頭や胸から生える人が多いけど、そうじゃない場合もたびたびあるようだ。一説によると心のつらさと身体感覚でリンクしている場所から生えるという。例えば太っていることを気にしている場合はおなかから、顔の醜さを気にしている場合は顔からといった具合に。あ、心因性の場合は引っこ抜くとつらさがとれるからいいことなのかな。
さて、ここまではつらいもが生える側に注目してきたけど、つらいもは芋だから、やっぱり食べられるかどうかが気になる。食べても特に害はないことは判明している。ただ、すごくまずい。すぐにペッてしても口の中に形容しがたい苦み、渋み、酸っぱみなどがしつこく残って、口をすすいでも牛乳を飲んでも気休めにしかならなず、嫌な感じが数分は続く。なかなかつらかった。だから食用として扱われることは一般にはない。
でも、やっぱり変わった人たちというのはいて、たまにつらいもを食べているらしい。ネットで見た情報でしかないが、つらいもが生える原因となったつらさの種類やつらさの程度によって味が全然違うんだとか。しかもマニアの間では高値で取引されるつらいももあるらしく、億単位の金が動くこともあるんだとか。高値がつくつらいもはほとんどが恋愛がらみで生えたもので、インパクトがありながらも複雑でクセになる味なんだとか。少し気になる。
少し話が逸れたけど、普通のつらいもは食べられたものじゃないし、家畜も食べないのでほかに使い途があるわけでもなく廃棄され、焼却処分になる。そのへんに放置しておくと芽が出ておぞましい見た目になるから絶対に焼却処分にしないといけない。
もし土地に根付いてしまったら災厄がふりかかると言われており、実際つらいもによって人類は何度か絶滅しかけていると歴史の授業で習った記憶がある。
いや、すでに人類は絶滅してて、身体からつらいもが生える私達こそが案外生存戦争に勝利したつらいもなのかもしれない。そこのところは誰も知らないし、きっと考えないようにしてるんだろう。ほら、つらい悩みは引っこ抜くと忘れちゃうから。
つらいも 全方不注意 @zenpofutyuui
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