第6話嫌な夢

「貴方は偉大な人になるのよ?だって頭がいいんだから、私を養うのよ?だって貴方は私の子供なんだから、おもちゃなんて絶対にダメよ?遊ぶのもダメ貴方は勉強をして偉大にならないといけないんだから」

(そうだ俺は母さんが望む自分を、母さんが喜んでくれる自分を演じなきゃ……だって俺はあの人の子供にんぎょうなんだから)

***

「っ!……ああクソっ最悪な気分だよ、まさか昔のことを思い出すなんて……」

フルムは目を覚ましてそう言った。

「ここの天井は驚く真っ白だな……あの時は目に映る全てが黒く見えてたのにな」

フルムはそう言って天井から目を逸らし、辺りを見渡す。

「てかここはどこだ?俺は道で倒れたはずだが……」

そう言って自分の足元へ視線を落とすと、そこには疲れ果てて寝ているアルズがいた。

「もしかしてアルズが俺を?」

「ええそうですよ」

突然ドアの方から男の声が聞こえた。

「驚かしてしまってすみません。私は貴方の担当をしている医師です」

白衣を纏った男が喋りながら俺の方へと近付いてきた。

そしてアルズの体に毛布をかけながら喋る。

「この子が頑張って貴方を運んだおかげでなんの異常は残らずに退院できますよ」

俺はアルズ頭を撫でながら「そりゃあ有難いもんだよ」と呟いた。

医者は俺のことを起きる前数分前から部屋に居たらしく、俺の尋常ではない焦りや言動を見聞きしていたらしく医者からは心配の言葉を告げられた。

「辛い様でしたら立ち止まって休まることも大事ですよ」

俺はまるで子供かのように見栄を張って医者の心配を受け取ろうともしなかった。

「俺は大丈夫ですよ、そんな立ち止まるほどのことでもないです」

俺は医者へそう告げてすぐ立ち上がり部屋を逃げるように去った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

奴隷と奴隷商人英雄になっちゃった キサラギ @mousouzokuatenai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ