いちいちいくつ問題
最近、これにずっとこだわってるんです。
なにそれ? と思うかもしれませんが、「物語を書くときに一ページあたりいくつのエピソードを入れるか問題」、略して「いちいちいくつ問題」と勝手に呼んでいます。
【例】
太郎は次郎の家に行くことにした。次郎の家までには険しい山道を登っていかねばならない。太郎はあの急勾配を思い出すだけで、額に汗がじんとにじんでくるようだたった。以前、次郎に会いに行ったのはセミが激しく鳴く季節だったと、太郎は記憶している。(中略)頭を振って頬をぴしりと叩くと、太郎はついに立ち上がって草履をつっかけ、小気味よい音を立てて扉を開けた。暑い。日向に一歩踏み出すと、まるで肌に閃光が刺さるようであった。
以上の文章を「いちいちいくつ問題」として解析すると……
①太郎が次郎の家に行くことにする
②前に会いに行ったときの回想
③太郎が立ち上がる
この三つの動きが含まれていることになります。
これを三エピソードと数えます。こんな感じで、40字×30行(もしくは40行あたり)の中にいくつエピソードが入っているわけ? というおはなしです。
この手法は完全に自己流です。
数え方には別のやり方も、もちろんあります。
①太郎が次郎の家に行くことにする
②急勾配を思い出す
③ついに立ち上がる
④扉を開ける
⑤一歩踏み出す
こうやって細部に渡ってエピソードを数える方法もありますが、私は基本的に「(現実に)人物の体が動いたかどうか」に着目してカウントするようにしています。
※三行以上に渡る回想は一エピソードとして数えます。
数え方にも一悶着ありそうな、そんないちいちいくつ問題を解決すべく、私は数冊の売れっ子物語たちを分解して読んでみました。
その中でも神速のペースでストーリーが展開していくのが「百年の孤独」ですね。
ガルシア・マルケスの傑作で、文庫化されて話題を呼んだ作品です。
これにはびっくり。一ページあたりいくつあるんだか分からないくらい、たくさん入っているんです。一行ごとに進行するといっても過言ではありません。
読んだ方にぜひ聞きたいのですが、「なんだかこの物語、おそろしくテンポが速いな……」とか考えませんでしたか? 目が滑ったらもうついていけないみたいな、少しぼうっとしただけで何がどうなったか分からなくなるような感じです。
純文学になると、十何ページも人物の体が動かない(思考をずっと動かしている)ことがあります。遅いな……と思ったことはないでしょうか?
だいたい一ページに一つのエピソードかなあ、なんて思っていたところに「百年の孤独」が入ってきて、え、ペース早くていいの? とか悩み始め、現在迷走中です。
だって、ちょうどいいテンポなんてものがこの世に存在しなくても、「ちょうどいい」を探してしまうのが人間じゃないですか?
で、結局、いちいちいくつ問題は解決しませんでしたとさ。おしまい☆
ネタバレなしの独り言 谷 亜里砂 @TaniArisa
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