第3話 間違った世界への片道きっぷ

モヤには口はなかったが

俺のほうを向いていないことはなぜかわかった。


「おれは さみしい おなじばしょからうごけない かわりばえしない みえない なかまが ほしい あいてのほうもやってきた くらい くらい おれのなかま」


モヤは同じ思想、同じネガな考えを持つものに訴えかけ、

呼び寄せるのだ。一方的にではなく、さっきの女の子も、来たい、

と思っているのだ。


俺はこんなやつらだけが悪い とはなぜか思えなかった。


なぜなら、モヤは人間の言葉の意味を話したからだ、

動物や化け物ならば、そんな

さみしい、くらい、なかま、

なんて言葉は引き出せないからだ。


こいつの正体は、

なんと人間だった。


すごい時間が経って、人間の魂の形状をしていなかったのだ。

つまり、この元人間のモヤを追い込んだ、センパイのモヤがいるのだ。


とても恐ろしいことに気づいた。

悪意には悪意の先駆者がいて、そのまた悪意の先駆者の先駆者がいるのだ。


普通の人間の子どもは、悪いことをさいしょにはじめた人間を責めるが、

その悪いことをさいしょにした人間にも、動機と源があったのだ。


俺はわけがわからなくなった。

モヤは最期にこんな言葉を俺のいる場にむかってぼやいていた。


4話へ つづく

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前世ばらし @ohurosuto

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