姉ちゃんに俺が書いたラノベを見せたら感想くれた。

海猫ほたる

前編

「万汰、何書いてるの?」


「ん?小説。ラノベだけどね」


「へー……面白そうじゃん」


「姉ちゃん……ラノベなんて読まないだろ?」


「ん?姉だって本くらい読むよ」


「本当かよ」


「詩とか書いてた事もあるんだよ」


「えっ」


「学生の頃とか、よく新宿の路上で売ってたんだから。結構みんな買ってくれたよ」


「まじか……ていうか大丈夫かそれ」


「だから、姉にちょっと読ませなさい」


「ま、まあ……良いけど……」


 俺の名は南洋なんよう万汰まんた


 自称小説家だ。


 と言っても書籍化された商業作品なんて無い。


 ラノベを書くのが趣味な、普通のサラリーマンだ。


 俺には姉ちゃんがいる。


 俺も姉ちゃんもまだ実家にいて、お互いに干渉しないで過ごしている。


 そんな姉ちゃんが、最近俺の書いている小説に興味を持ちはじめた。


 だから昨日、試しに俺が書いたラノベを読ませてみたんだ。


「姉ちゃん、読んだ?」


「あ、万汰。読んだぞ全部」


「まじか……十万文字はあるぞ。姉ちゃんがらそんなに文字読んで知恵熱出さないなんて」


「あのね……姉を何だと思ってるの。でも、万汰の小説、結構面白いからあっという間に全部読めちゃった」


「本当?」


「うん」


「じゃあさ……か、感想とか……聞いても良いか?」


「お、万汰、感想聞きたい?」


「ああ。公募に出したいと思ってるんだ。その前に、第三者的な意見が聞けるのはありがたい」


「じゃあ言う」


「……ど、とうぞ」


「まずねー、いきなり最初に主人公が死んじゃうのはどうなのかなって」


「そ、そこかー」


「だって、これから話が始まるってのに、死んじゃうなんて、酷くない?」


「そ、そうかな」


「うーん、やっぱりね、最初はちゃんと日常を描いた方が良いと思う」


「ま、まあそれはテンプレってやつで……」


「テンプレ?」


「……いいから続けて」


「あと死に方」


「それが何か?」


「主人公が薄雲線の線路に飛び込んで、特急に轢かれてるでしょ」


「あ、ああ」


「これって、いつの話?」


「今現在のつもりだが」


「薄雲線のホーム、2010年からホームドア設置されてるよ」


「うっ!しまった!」


「あと、死んだ後女神様に生前の行いを褒められるじゃない」


「ああ、異世界に転生するための布石ですね」


「これってどこの女神様なのかな?ここの女神様の宗派だと自殺は罪にならないのかな」


「そこまでは考えて無い……です」


「その後、異世界ってところに転生するよね」


「しますね」


「この異世界って中世ヨーロッパみたいなファンタジー世界なの?」


「まあ、ナーロッパですね」


「ナーロッパ?」


「良いから、続けて」


「どうしてファンタジーの世界なのに、レベルやステータスがあるの?」


「いやー、そこは深く考えてないけど」


「ステータスがあるなら、これはゲームなの?ゲームじゃないの?」


「いやー、そこも深くは……」


「ゲームにしても、やたらとド●クエ要素が強いのは何で?」


「ドラ●エ要素?そんなのあったかな」


「ほら、最初に出会う敵、スライムでしょ」


「まあ、定番ですね」


「宝箱にミミックいるでしょ」


「いますね」


「魔王もいるでしょう」


「いましたね」


「主人公、何もしてないのに勇者と呼ばれてるよね」


「そうですね」


「これって、全部、ドラク●要素だよね、何でファンタジーの中でも●ラクエ要素だけがこんなに色濃いの?」


「むしろ何で姉ちゃんそんなにド●クエに詳しいんだよ」


「万汰、姉のドラクエ愛を甘く見ないで欲しいわ。こう見えてDSでシリーズカンストしてるのよ」


「姉がついに伏字をやめた……」


「まあ、それは良いのよ。ドラ●エ好きなんだなーってのは伝わるから」


「別にそんなに好きなわけでは」


「でもね、その割におかしいの!」


「な、何がですか」


「スライムの次に、ツノのついた兎の敵に出会うじゃない」


「ああ、いますね」


「その兎、凄い首を狙ったクリティカル攻撃を仕掛けて来るでしょう」


「そうですね」


「それ、ウィ●ーリィなのよ。ド●クエのウサギはそんな攻撃してこないのよ」


「姉がウィザー●リィにも詳しかった……」


「まだあるわ」


「まだあるんですか」


「勇者ってね、普通は自分から名乗らないのよ。たくさん冒険をして、多くの人に偉業が認められて、初めて勇者と呼ばれるのよ。最初から軽々しく名乗ってるのは、勇者じゃないわ。偽勇者よ」


「姉が勇者に厳しかった……」


「それとね」


「ま、まだ序盤では……」


「そうね。一度休憩しましょう。麦茶飲んだら続きを語るわよ」


「……これは長くなりそうだ」

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