ブロッサム・エクスプロージョン!!

@syu-inononn

とある都市にて

 ここはある都市の一角。

 物語はこの冒険者組合の受付から始まる。


「なんとかしてくだせぇ!このままでは村が滅んでしまいますだ!」

「と言われましても、この金額では引受ける方はおられないかと・・・」


 まず、受付でそこに座っている受付嬢と遠い村から来た男が揉めていた。


「いいわよ。あたしが引き受ける」


 乳紅色の髪の少女が近くをたまたま通ったので声を上げた。


「ありがとうございます!おねげえします!」


 村人の男は頭を下げた。


「よし!決まった以上はさっさと行くわよ」


 彼女は手続きを手早く済ませると男に場所を案内させた。

 乳紅色の髪を腰まで伸ばし、紺と淡い真珠色を基調とした導士着には涼やかな切れ込みが入っている。

 胸元には拳大の水晶、両手首とベルトの留具、おそらく耳飾りも護符や術符の類であろう。

 年齢は十代後半に入ったばかりで彼女の名はルティア。

 腰の後に差した短い錫杖は魔法使いの証である。


 彼らが都市の外に出て少し歩く。

 当然出るは、魔物である。


「グォォォ!」

「下がってて!」


 彼女は指示をすると手早く呪文を唱えた。


「フレイムブラスト!」

「ー!!」


 魔物は炎の柱に包まれた。


 ドコォォォ!!ガガガガガッ!!

 バチバチッ!!ガラガラッ!!

 バコ!!バコ!!ドゴォォォン!!

 ゴゴゴゴゴゴォォォ!!


 迫りくる魔物を容赦なく魔法で吹き飛ばすルティア。

 この後も、オーク、ゴブリン、ウェアウルフなど

 その他魔物だけではなく、追い剥ぎや野盗の類も

 問答無用で蹴散らして行く。


「茫然としている場合じゃないわ!!先を急ぐわよ!」


 あまりにも素早い魔法捌きにじっとしてしまった男に

 彼女は怒りの言葉をぶつけて動かした。


 男の出身という村を通り過ぎ、しばらく歩くルティア。

 かく言う依頼者の男は、この奥にいる魔物が恐ろしすぎるので

 これ以上の案内は無理と言った。

 流石に道中のルティアの戦いっぷりから

 幾ら命はあっても足りないだろうと思われる。

 魔法に巻き込まれる可能性があるから、当然の話であろう。

 彼女はそれに承諾し、ドンドン進んでいく。

 鬱蒼と拡がる木々。陽はまだ高く、気温は言うほど高くない。

 これから季節的に気温は高くなるであろう。

 道中に木々には真珠色の花や炎の様な色の花を

 付けているのもある。

 今の季節は言うまでもなく春である。

 彼女はこの奥にいる魔物をぶっ飛ばしたら

 お昼ご飯を食べると心に決めたのだ。

 美味しい昼食のためルティアは突き進む。


 奥にポツリで存在する巨大な樹。

 淡い紅色の真珠のような花びらが舞い散る。

 その美しさは息を飲む程だが、纏う気配は魔物そのものである。


『ニンゲンノ小娘カ?美味ソウダナ』

「あんたが村人が言っていた魔物ね!ぶっ飛ばしてやるわ」

『貧弱ナ身体ヲシタ子供ニ何ガデキル?』


 ーーーープッチーン!


 何かが切れる音がした。


「サラマンドラ!ブラスト!」


 ゴォォォォォ!!

 天まで昇る程の高さの火柱が魔物を包み込んだ。


 ★☆★☆★☆


「で、自分のことを馬鹿にしたから魔物を焼いちゃったと」

「そういう事。あの魔物をぶっ飛ばした後

 温泉出てきて大変だったのよ」


 相席している絹のような黒髪の青年にあっさり応えるルティア。

 彼女の胸元は大きな水晶で誤魔化されているが、貧相な身体付きである。

 その事を指摘したら先程の魔物と同じ運命をたどるのはおそらく間違いないであろう。


「へぇ。大変だったね。で、この山のようにあるお菓子はなんなの?」


 同じ魔法使いである青年はルティアの横に積まれたものを指さした。

 青年の方はルティアと付き合いが長いのもあって落ち着いている。


「そこにあるのは依頼を引き受けた村の特産のお菓子。おまけでたくさんくれたから・・・・ミコト、あんたにもあげる」


 ルティアはテーブルの上にあるシチューを平らげながら応えた。


「んで、言っていた王子様探しは続けるの?」

「ん〜!!?」


 ルティアは青年ミコトの発言に言葉を詰まらせた。


「だって、こないだエディプシオンの調査の仕事断られたって言ってたじゃん」

「それはあたしの実績がなかったからよ!!それにあんたには関係ないでしょ!!」

「いや、今ヴュールの奴がいないから聞いてやろうと思って」

「なっなに言ってんのよ!!それとこれは別問題よ」

「へぇ、別問題ねぇ」


 ルティアはヴュールという名を聞いてドキッとした。


「何よ?なんか言いたい事でもあるの?」

「まぁ、君の父さんも言っていた王子様も手掛かりないから探すのは大変だなと思って」

「父さんはとにかく。レスト王子の方は手掛かりが新しいからまだ見つかりやすいと思うわ」

「その王子だけど意外と近くにいたりして」

「まさか、ヴュールがって言いたいの?」


 ルティアは首を横に振り否定した。


「言って置くけど、レスト王子は輝くような黄金色。

 ヴュールは燃え盛る様な赤色。そもそも髪色が違うわ」


 ルティアは立ち上がり、旅仲間であるミコトに言った。


「あたし、明日も早いからもう寝るわ。おやすみ〜」


 足早に彼女は寝室へ向かった。


「さて、本当のことを知っているけど

 このままの方が面白いから黙っておくかな」


 ミコトはそう呟くと飲み物を追加注文した。

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