二年後の流れ星
ろくろわ
星は燃え尽きるまえに
遠く離れた故郷を思い出すことはもう無い。
僕らが此処に送られてきたのは、もう随分昔の事だ。
『国際戦略地不可侵条約』が二千百年代に設定されてから、戦争の場所は地球から宇宙へと移された。
まぁ平たく言えば『地球の資源や領土、宗教と権利。その他の一切のものを奪い合う戦争において、その基盤となる地球環境を破壊しながら行うことは、利が得ない。なので地球以外で権利を求め、争いなさい』と言うことだ。
そして選ばれたのは僕らが便宜上、dust《ダスト》 earth《アース》と呼んでいるこの、地球から遠く離れた名もない場所だ。
僕らはこの地に、地球から二年の歳月をかけて送り込まれる。此処にたどり着く二年の間は、宇宙戦艦内で基礎戦闘訓練を行う。そしてダストアースに辿り着くと国毎に別れて争うのだ。
「
「あぁそうか。有り難う」
流暢な日本語のマイケルの声に僕は時刻も確認せず、国へと報告をいれる。
【こちらは第四十四歩兵部隊。戦況は拮抗しており戦果に変わり無し】
マイケルも同様に国に報告を行っていた。
「さて、今日も無事報告は終わったな」
「あぁ。今日も国からの報告に関する返信は無いな」
「私たちのところも同じだよ」
既に本国から報告に対する返答はない。
人員だって、昔は数ヵ月毎に来てたのに年々遅くなっていき、装備も随分劣化していった。補充は数年間無い状態で、
だからだろうか。いつからか、僕達は戦うことを止め、定時報告だけを行うようになっていた。
それだけじゃない。全ての兵士と共存し、多種多用の人と住んでいたが、資源が少ない分協力して暮らし、小さないざこざは有るもののわりと平和であった。
「さて、そろそろ最後の仕事をすることにしようか」
誰も僕の言葉に返す人はいなかった。ただそれぞれの決意を固めた表情をしていたことだけは確かだった。
皆、同じようなボタンを取り出すと、誰かが最初の声をあげるのを待っていた。
どうせ、誰もあげることはない。それなら僕が。
「人類に良き未来を。発射」
僕はそのまま握っていたボタンを押した。遥か彼方より沢山の光が
少し遅れて皆各々の言葉を残しボタンを押した。
暗くて明るい
本来、自分達を倒すためだった兵器は、その役目を果たさず何十年もの間保管されていた。そしてそれは今、燃え尽きない流れ星の種として打ち上げ、
二年の歳月をかけて。
遠い故郷では、二年後の今日。夜空に広がる無数の流れ星を見るのだろう。
そこに流れ星を見る人がいれば、だけど。
ここには二年後の流れ星の行方を知る者は誰もいない。
僕達は宇宙に向かい昇る流れ星をただ見上げ、静かに見送った。
了
二年後の流れ星 ろくろわ @sakiyomiroku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
人見知り、人を知る/ろくろわ
★57 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます