第27話 指輪
祖母が亡くなった時、沢山の花輪が道路の両サイドに飾られたが、叔父の知り合いの芸能人の方が親切に花輪を出してくれた。小学校までの通り道なので、子供達が、あ、〇〇て書いてある、嘘だ、絶対に嘘だ、などと花輪を見て勝手な事を言っていたのを覚えている。私の高校の卒業式まであと数日だったが、もたなかった。受験に合格した事は、入院中に伝えられたから少しは良かった。
御正月には必ず、祖母、弥生さん、母、そしてサイドにそれぞれ私達が一人づつ付き、花札をする事が祖母達の楽しみだった。手札を撒く時に時計回りと逆にすると、じゃんぼん回りは縁起が悪いからダメだよ、と注意された。
祖母の棺を近くの山まで、鬼と喚ばれる組合の四人が、棺の下に通した二本の丸太の両端をそれぞれ担ぎ、鐘を鳴らす人が先頭に立ち、葬儀に参列した人達が、二列に並びその鐘の音にづらづらづらづらと続いて近くの山まで歩いて行く。竹藪の近くの統一さんのお墓まで着いたら、大きな穴が縦長に掘ってあり、祖母の棺はその穴に容れられてゆく。鬼が土を被せてゆく。私達も一握りの土を取り、祖母の棺の上へと投げ込んでゆく。鬼は母屋でお風呂に入り、鬼の衣装は洗濯され、北向きに干される。
その最期の入院中に祖母から、祖父がオーダーメイドした祖母の大切な大切な指輪を譲り受けた。祖母は、母にではなく、叔母にでもなく、妹にでもなく、私にくれた。数年後、その指輪を付けて居たら、叔母に、すごく良い指輪をしているのね、彼氏に貰ったの?と言われた。私は何も躊躇いもなく、祖母から祖父のオーダーメイドの指輪を譲り受けたと伝えると、叔母の表情が凍り付いた事を今でも覚えている。
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