第24話 誕生日
小学生になると自分の誕生日にクラスメイトの数名を自宅に招待して、唐揚げやらフルーツゼリーやらちらし寿司やらバースデーケーキやらを振る舞い、近所の文房具店で購入したプレゼントを貰う、という行事が追加された。流行りの香り付き消しゴムやアニメキャラクターが付いたティッシュにプクプクしたシールなどなど纏めてラッピングをしてもらう。お誕生日会を開く各家庭は、競ってテーブルに乗りきらない程の御馳走を作る。だが、私には招待する友達を選別する事も気が重いが、更に招待されなかったクラスメイトが嫌がらせをしてくる、という二重苦が待っていた。それでも昔は学校だけの話で、今の小学生達の様にスマホがあるためにいじめが四六時中になってしまう事はなかった。
楽しくて毎年お誕生日会を開いていると親は思っていただろう。おめでたい話だ。
小学校へ通い始めた頃、隣の席の男子が一日中私の太ももをつねっていて、まだ内気だった私は痛みに耐えながら、辛い毎日を送っていた。また朝がやってきて学校に登校しないといけなくて、行きたくない気持ちで玄関先に座り靴ひもを結んで居るときに、つらつらつらと勝手に涙が溢れてきた。私は恥ずかしくて親に見付かりたくなかったし、心配させたくなかったし、まさか虐められているなんてがっかりさせたくなかったから、すぐに涙を拭ったが、祖母だけは、どうした?学校で何かあったのか?と聞いてきた。私は、ううん、何でもない、と嘘をつき、気合いをいれて登校した。その男子は数年後、入院してお腹を切る事になる。
ある年は、お誕生日会が嫌すぎて夏休み中気が重かったら、誕生日前後に丁度台風が来てくれて、お誕生日会が中止になった。近くの川が決壊して、いつも誕生日ケーキを購入していた隣町のケーキ屋さんに、購入に行けない程だった。ケーキは残念だし、プレゼントは友達からは貰えなかったけど、私はとにかく嬉しかったし、スッキリしていた。風はあまり好きでは無いが、雨は好きだった。
運動会も台風が来て、三回延期になり、ちょろっと形だけやって終えた年もあり、嬉しくて小躍りした。足が遅かった訳ではなく、一位を取れないクラスメイトからの嫌がらせが面倒だったし、障害物競走があるのに、わざわざツインテールにしてボンボリを頭にくっ付けているぶりっ子女子が、網がボンボリに絡まり泣いて、男子からちやほやされる、お決まりパターンを見るのもウザかったからだ。
とにかく誕生日は好きでは無い、そんなセリフを孫の口から聞くことになるなんて夢にも思っていなかったであろう祖母は、首里は愛宕様の日に産まれたのだから、頭脳と美の神様よ、これから何でも好きなこと沢山出来るのだから、おばあちゃんを見て、おばあちゃんはもうこんなになってしまったけど、首里はこれからなんだから、と、言っていたが、私の人生、祖母が言うようにそんな上手くはいかなかった。
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