第21話 井戸
母屋の一階は御店も兼用になっていて、大型冷蔵庫やフライヤーやスライサーなどなど危ない機械が沢山並んでいた。一番嫌だったのは、天井から巨大な鉄のS字フックで半身になった養豚が何枚も下げられていた事だ。幼い頃は、祖母に東側のガラス戸から出入りする様にと言われていた。御店に足を踏み入れなくてすむ。母屋の一階のキッチンから北側に一周すると御店と繋がっていたが、その途中に山の様な段ボールの下敷きになっている井戸があった。危ないから北側には近づかない様にと祖母に言われていたので、井戸の蓋を開けて覗いた事は無いが、井戸は、この北側のだけだと思っていた。
千代さんが亡くなってから程無くして弥生さんも亡くなるのだが、弥生さんが棲んで居た家は、亡くなってすぐに取り壊され、ついでに統一さんの頃には建っていた、物置小屋と言うには大きすぎる建物も取り壊された。弥生さんや八吉さんの思い出の品など、一つも残せなかった。あっという間に取り壊された。人として生きる虚しさの様なものを感じた。彼女は、幸せだったのだろうか?
ん?何だろう?これは?物置小屋を取り壊したら、地面に穴が空いていた。
これも、井戸?
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