第19話 前世
小学校に入学すると、他保育園などから集められ見たこと無い山奥や川側の子達と同級生になる。小学生の男子なんて極悪非道の塊に思えた。
「ソバカスばばあ、やーいやーい。」
と、入学して間も無くからかわれた。そんな事今まで一度も、誰からも、言われた事が無かったのに。確かに妹には全然無いのに、私には顔中にシミやソバカスがある。同級生にからかわれ落ち込んでいた私は、祖母に聞いてみた。
祖母は、
「おばあちゃんは、前世で人様のお腹を斬ったり、沢山の人を斬ったりしたから、今世は斬られる傷みを知る為にこんな身体で産まれたんだよ、シミやソバカスは人を焼き殺したんかね、前世ね。」
と、すらすら得意の諺かの様に言い終えると、草加せんべいの醤油味をパキパキ割って口へと放り込んだ。
「何と?焼き殺した?前世?何それ?」
と聞くと、祖母は、お気に入りの敬老の日に私から貰った名前入りの湯呑みに、赤茶色の急須で容れたての玉露を啜りながら、
「誰でも何かしらやり直す為に産まれて来ているんだから、朱里は、何だろうね、でも、大丈夫だよ、悪いようにはならないからね。」
とお煎餅を口に含んだ御茶でふやかしながらモニョモニョ言った。
前世?不思議とこの言葉はすぅと心の奥に入ってきて、大きく澄んだ湖に紅葉の青葉がひらりと浮いているかの様に、静かに浸透していった。
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