第16話 病院
何度も入院を繰り返していた祖母だったが、最期の入院は、かなりハードな手術を経験したからか意識が朦朧とする時が多々あった。 癌も末期状態だったし、転移しまくって体力も限界だったのだろう。
歩く百科事典、私は祖母をそう呼んでいた。
病弱で女学校もろくに通えなかったのに、何でも知っていて、私の小学生の頃の作文や絵画、工作などは、ほぼ祖母の作品だと言っても過言ではない。諺が特にお気に入りで、天才も二十歳過ぎればただの人と、よく言っていた。誰の事なのか?たとえなのか?当時は謎だったが、それが、母の事だと知るまで何年も掛かった。
何せ、賢く頭が常にしっかりしていた祖母だったが、今回ばかりは、妙な言葉を発していた。
「亜希は、荷台にグルグル巻きにしてくくりつけて、東京の澤口さんの所にでも送ってしまえ!」
「東の井戸を塞いでは駄目だ。」
「裏の欅の氏神様に梅干しを。」
祖母が最期の入院中に、私以外の家族も心霊現象を体験する事になる。
今まで怪奇現象を訴えてきても、祖母以外は信じてくれず、私の頭がおかしくなったのかと変人扱いしていた。
母と私達孫軍団は、面会時間ギリギリまで病室に居座っていたが、車で四十分かかる祖母が入院している病院から帰って来て、自宅の仏間を開けたら御仏壇から、朱色のお着物を着た長い髪の女性が、フワァと飛んで出てきたのを、運悪く?一番乗りでガラス戸を開けた弟が見た。妹は、一階から夜中にテレビの音が大音量で聞こえてきて、煩くて試験勉強が出来なかったらしい。一階は、祖母しか寝ていなかったので、祖母が入院中は、もちろん誰も居ない。母も父も詳しく話さないが、摩訶不思議な事があったらしい。
祖母は私にとても優しかったので、入院中にこれから味方が居なくなる私を不憫に思って、力を貸してくれたのかと勝手に思っていた。
祖母が入院中に思い出した事があった。
あの紐が付いた人形の事だ。
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