第10話 慰霊碑
私が通っていた小学校は、自宅から百メートル程の坂の上に在り、築山とよばれる更に小さな丘が運動場外れに二つあった。巨大な黒松が、何故こんな邪魔な所に?と思う程、校庭の真ん中依りにあった。
小さな小さな村の電車も走って居ない、まるで現代から取り残された様な、そんな田舎の集落に百二十五年前から在るらしいが、校舎は戦後に建て替えられたそうだ。その時、数人の土建屋さんが亡くなったらしい。また、祖母の話しでは、戦争で亡くなった身元の解らない無縁仏さん達を、校庭の下に埋めたらしい。そんな話しを小学生の孫に話したら、普通怖がると思うが、当時私は、そんな話しに気を配る余裕など無く、昔の話し、位にしか思わなかった。
そういえば、築山の横に、小学校には不自然な感じの大きな大きな石を削り、表面を平らにして細かい漢字がびっしりと書かれている、慰霊碑の様な物があった。とても暗い感じがして、私はその場所があまり好きでは無かった。色もグレー一色だし。同級生は慰霊碑の階段を登ったり、お城の塀の様な所をよじ登ったり、かくれんぼなどして遊んでいた。その慰霊碑には何が書いてあったのか、小学生の私にはよく解らなかった。高学年にもなると、怪談話しや学校の七不思議など、休み時間の会話に出てくるが、その一つが、この慰霊碑で結界の目印らしいよ、などと根も葉もない内容だったし、校庭の邪魔になっている黒松は、昔首を吊った死体が沢山ぶら下がっていたんだって、という何処情報?的な話しだったが、そんな事在るわけ無いと思いながら皆生活をしていた。
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